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3/28/2026

博労する(ばぐろする)

奥州東北語(標準東北語)および東北各地の
言語の公用語化の一環として、東北各地の言
語資料を基に、「博労する」の用法・語源に
ついて整理しました。

編集者:千葉光

目次:

01. 意味
02. 活用
03. 語尾のウ音は脱落
04. 名詞としての現代的な使い方
05. 語源
06. 各地の言語資料より
 【青森】津軽 南部
 【秋田】由利
 【岩手:旧盛岡藩】北部
 【山形】全般
 【宮城】全般
 【福島】全般
07. 編集後記

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意味

博労する

〔読み方〕ばぐろする・ばくろする
〔意味〕(物と物とを)交換する
〔品詞〕名詞+サ変動詞

目次 ↑

活用

「博労(ばぐろ)する」のサ変動詞としての
活用について整理しました。

目次 ↑

【活用】博労する(ばぐろする)
参考:【え・あ中間音】

未然形および連用形に接続する希望助動詞は
「え・あ中間音」のため、変体仮名で表記し
ています。

目次 ↑

語尾のウ音は脱落

東北の言語では、ウ音便形の「ウ」が脱落す
る傾向にあります。

したがって、「博労(バクロウ)」は「バグ
ロ」となりますが、「バグロー」と併用され
ることもあります。

他の語の事例を挙げます。

例①:
○ども→ども
○ありがと→ありか゜ど
○おはよ→おはよ

例②:音読み
【方】おら方(おらほう)→おらほ・おらほー
【道】街道(かいどう)→けァーど

全体的には「ウ音」が脱落する傾向が強いで
すが、長音と併用されることもあります。

目次 ↑

名詞として現代社会に適応させた使い方

名詞「博労(ばぐろ)」の、現代社会に適応
させた使い方について整理しました。

【経済】
・株式博労—株式交換
・金利博労—金利交換
・通貨博労協定—通貨スワップ協定

【日常・ビジネス】
・名詞博労—名詞交換
・意見博労—意見交換
・土地博労屋—不動産屋
・(商品の)返品博労—返品交換

「土地博労屋」については、青森の資料「南
部のことば」でとりあげていた「田地博労(
現在の不動産屋)」に着想を得ました。

目次 ↑

語源

東北各地の言語資料では、「博る」の語源を
、「博労」の動詞化とする説が一般的です。

次の資料では、名詞「博労」の語源について
とりあげています。

目次 ↑

語源探求 秋田方言辞典(中山健, 2001年)
ばくろう〔名〕〔他サ変〕
〔意味〕交換。交易。とりかえっこ。
〔バグロ〕平鹿郡
〔例〕「コノ 林檎ド ソノ 柿ド バグロシネァガ」

〔語源考察〕
ばくろう〔馬喰・博労〕〔名〕
(「はくらく(伯楽)」の転)
馬や牛の交易売買をする人、またその職業。
これから転じて、物と物とを交換すること、
交易の意に用いられる。

*雑俳-大福寿覚帳「人げんのばくろうをし
 てくてとおる」〈『日本国語大辞典』〉
 ―これに基づくもの。
【補足】
この資料では、例文に「バグロシネァガ」と
、サ変動詞としての使い方を挙げています。

「ばくろう」の語源については、「伯楽(は
くらく)」の転であること、馬や牛の交易売
買をする職業から、物と物とを交換する意に
用いられるようになったとしています。

尚、文献として、江戸時代中期の大福寿覚帳
(だいふくじゅ-おぼえちょう)をとりあげて
います。この時代には、江戸において、「ばく
ろうをして〜」と、サ変動詞として使われて
いた形跡があることが窺えます。

目次 ↑

語源 ↑

各地の言語資料より

東北各地の言語資料より、意味・用例などに
ついて整理しました。
*言語資料名の( )内は、著者・発行年

目次 ↑

青森(津軽地方)
津輕方言集(齋藤大衛・神正民, 1902年)
ばくろする
〔意味〕トリカヘル
〔解説〕
物品(シナモノ)を交換(トリカヘ)ルコト
馬ヲ交換スルモノヲ馬喰(バクロ)トイヘル
ヨリ起リタルカ
【補足】
発行年の1902年は、明治35年です。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

青森(南部地方)
第三版増補改訂 南部のことば(1992年、佐藤政五郎)
ばぐろ
〔解説〕
ばくる—交換する—人—売買の仲買人
博労・馬喰。

○馬ばぐろ
○牛ばくろ
○田地ばくろ
○ばくろ宿
でんちばくろ
〔解説〕田地博労—現在の不動産屋
※引用欄を見出し語ごとに分けました。

【補足】
「博労(ばぐろ)」とは、もともとは売買の
仲買人を指す語です。したがって、「馬」を
扱う者は「馬博労」、農地を含む土地を扱う
者は「田地博労」となるわけです。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

秋田(由利)
本荘・由利のことばっこ(本荘市教育委員会, 2004年)
ばぐろ・ばくろー〔名〕
①博労。牛馬商。
②交換。
【語源】「はくらく(伯楽)」から転じた語。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(北部)
軽米・ふるさと言葉(軽米町教育委員会, 1987年)
バグロー
〔解説〕
牛馬の売買を業とする人 馬喰(古語)
「ばくろう(馬を売買・周旋する人。物と物
とを交換すること)」。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

山形(全般)
山形県方言辞典(山形県方言研究会, 1970年)
ばぐロ
〔意味〕交換
〔分布地点〕東置賜郡・西置賜郡・東村山郡・北村山郡

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

宮城(全般)
胸ば張って仙台弁(後藤彰三, 2001年)
バグロ

<馬喰>
牛馬を売買する商人。以前は売買のバグロと
病気を治療するハグラグ<伯楽>と別れてい
た。上手な伯楽と人気のあった博覧会とを結
びつけて、うまくいった時など、「ジョウト
ウハクランカイ」などと称した。

物と物を交換することをバグルというがこの
バグロに由来する。また、教員の人事異動の
会議をバグロ会議といったりした。

東鑑
「長沼五郎正宗博労の奉行すべき旨仰せつけらる。」
【補足】
解説で、動詞「バグル」が「バグロ」に由来
するとあり、それに続く形で、教員の人事異
動の会議を「バグロ会議」と言っていたとあ
ります。

この「バグロ」とは、ある学校の教員を、別
の学校の教員と置き換える(博労する)こと
を指していたものと考えられます。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

福島・全般

福島県方言辞典(児玉卯一郎, 1935年)
バクロ【名詞】
〔意味〕交換(伯楽)
〔使用地域〕県北・県中

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

編集後記

かつての日高見国である東北地方の言語を未
来へ継承していくためには、公用語化が不可
欠です。

当方の提唱する標準東北語の用法は、国語の
東北版として、東北各地の言語資料を基に、
東北の広範囲に共通の用法で構成されており
、文章語として公文書や記事などに使うこと
を想定しています。

尚且つ、東北全土の言語に対応しているため
、東北各地の言語の地域公用語化にも貢献で
きるはずです。

当方では、標準東北語を、中国における北京
官話(普通語)に相当するものと位置付けて
いますが、「方言」から公用語化への脱却こ
そが、明治以降、自らの言語を否定され、劣
等感を植え付けられた東北の力を引き出す原
動力となるはずです。

編集者:千葉光

目次 ↑

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3/22/2026

んだって・んだて

奥州東北語(標準東北語)および東北各地の
言語の公用語化の一環として、東北六県の言
語資料を基に、「んだって・んだて」の用法
について整理しました。

編集者:千葉光

目次:

01. 意味
02. 用例
 ・仮定逆接法
 ・確定逆接法:日常
 ・  〃  :長文
 ・  〃  :ビジネス・仕事
 ・  〃  :人生
03. 語源探求 秋田方言辞典
04. 各地の言語資料より
 【青森】津軽 南部
 【秋田】全般 県南 由利
 【岩手:旧盛岡藩】中部
 【岩手:旧仙台藩】内陸 
 【山形】全般 庄内 置賜
 【宮城】仙台 県北 三陸圏 県南
 【福島】全般 会津 中通り中部
05. 編集後記

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意味

んだって・んだて

【仮定逆接法】
 でも・だって・そうはいっても・
 そうであっても

【確定逆接法】
 しかし・だが・そうだけれども

東北各地の言語資料に従い、意味を二通りに
分けました。

目次 ↑

用例

「んだって」を用いた標準東北語としての用
例を、仮定逆接法・確定逆接法ごとに作成し
ました。

【仮定逆接法】でも・だって・そうはいっても・そうであっても
【確定逆接法】しかし・だが・そうだけれども

目次 ↑

仮定逆接法
【仮定逆接法】
参考:
【え・あ中間音】
【ha助詞】

目次 ↑

用例 ↑

確定逆接法:日常
【確定逆接法】日常
参考:
【え・あ中間音】

目次 ↑

用例 ↑

確定逆接法:長文
【確定逆接法】長文
参考:
【え・あ中間音】

目次 ↑

用例 ↑

確定逆接法:ビジネス・仕事
【確定逆接法】ビジネス・仕事
参考:
【え・あ中間音】

目次 ↑

用例 ↑

確定逆接法:人生
【確定逆接法】人生
参考:
【え・あ中間音】
【合略仮名】
【ha助詞】

目次 ↑

用例 ↑

語源探求 秋田方言辞典

次の資料では、「んだって・んだて」の意
味について、詳細にとりあげています。

目次 ↑

語源探求 秋田方言辞典(中山健, 2001年)
そだって・そだたって、
んだって・んだたって、
したって・したたって
〔接続〕

〔ソダテ〕平
〔ソダタテ〕山 南 河 平 雄
〔スダタテ〕由
〔ンダッテ〕市 仙 平 由
〔ンダッテナヤ〕仙
〔ンダッテモ〕仙 由
〔ンダテ〕北 山 市 河 雄 由
〔ンダテモ〕平
〔ンダタッテ〕南 市 平 仙 雄
〔ンダタッテセァナ・ンダタッテナヤ〕仙
〔ンダタテ〕山 南 市 河 平 雄 由
〔ウダタテ〕平
〔ンダシタテ〕(丁寧)平
〔シタッテ〕南 市 由
〔シタテ〕鹿 北 山 市 平 由
〔シタタッテ〕市
〔シタタテ〕北 山 南 市 仙 由

これらの接続詞は、その場によって次の二つ
の意味で用いられるようである。

(1)
相手の言う事柄などについて、不承知で反論
する場合に用いる。
そうはいっても。そうであっても。だって。
でも。修辞的仮定逆接法。

ンダテ オラ 知ラネァガッタモノ」
ンダタテ オレニバ デギネァ 話ダ」

「『サットデ 良(エ)ガラ 戸コ 開ゲデケレ』
シタタテ、ナッタラ(決して)家ノ 人ダヂ
戻ッテ来ルマデ 誰 来テモ 開ゲダテ
ヤザネァッツケオノ(だめだと言ったもの)』」
(『秋田むがしこ』太田村〈現太田町〉)


(2)
確定逆接。そうだけれども。そうだが。だが。

「昨日ァ エー 天気デアッタ。ンダッテ
体ノ アンベァ 悪リクテ 仕事 休ンデシマッタ」

「オレモ 戸 開ゲルニ 行ッテミダ。シタタテ
、トデモ 開ゲレネァガッタ」

〔語源考察〕
ソダッテ・ンダッテは「それ(代名詞)+だ
(断定の助動詞の終止形)+と(引用の格助
詞)+いっ(「言う」の連用形)+ても(仮
定逆接法の接続助詞)」の転化。
(中略)
「たとえ・・・そうだといっても」の意であ
るが、実際には修辞的な仮定逆接法として相
手のいう事柄などについて、不承知で反論す
る場合に用いる。

そして、この(1)の用法から転じて(2)
の確定逆接法にも用いるようになったもの。
※使用郡市名
鹿:鹿角郡  北:北秋田郡 山:山本郡
南:南秋田郡 市:秋田市  河:河辺郡
仙:仙北郡  平:平鹿郡  雄:雄勝郡
由:由利郡

【補足】
この資料では、見出し語を6通り挙げており
、「そだって・んだって・したって」の3系
統ごとに、秋田県内における言い方を17通
り挙げ、その使用郡市名を示しています。

意味については、(1)「そうはいっても。
そうであっても。だって。でも。」と、(2
)「そうだけれども。そうだが。だが。」の
2通り挙げています。

そして、(1)の修辞的仮定逆接法の用法か
ら転じて、(2)の確定逆接法にも用いるよ
うになったものとしています。

目次 ↑

語源探求 秋田方言辞典 ↑

各地の言語資料より

各地の言語資料より、「んだって・んだて」
の意味・用例などについて整理しました。

尚、参考までに、同じ意味の「んだたて」(
福島を除く東北5県に分布)についても、
とりあげています。

*言語資料名の( )内は、著者・発行年

目次 ↑

青森(津軽地方)
津軽木造新田地方の方言(田中茂, 2000年)
ンダバタテ

【意味】そうだけれども
【その他】
形容動詞「ンダ」に接続助詞「バタテ」が付
いた形である。「ンダバタテ」「ンダタテ」
ンダテ」「ンダバッテ」の四種類の似た形
の語があるのでこの項で扱った。意味は四
つとも同じである。

詳しくは「シタバッテ」「バ」の項で考える。

「ンダバタテ」で接続詞とみてもよいのかも
しれない。その場合、逆接の接続詞というこ
とになる。

【用例】
ンダバタテ、今忙シハンデ行ゲネ。
(そうだけれど、今忙しいから行けない)
シタバッテ
【意味】そうだけれども・だけれど
【品詞】接続詞
【その他】
「シタ」は補助動詞(の過去形)。「バッテ
」は接続助詞で、それぞれ独立の一語である
。しかし「シタバッテ」と、一語として遣わ
れることが極めて多い。一語の接続詞と見て
いいのではないか。
(中略)
この「シタバッテ」と同義の語に「シタバタ
テ」「シタタテ」「シタテ」の語がある。
(中略)
いずれも逆接の接続詞。

【用例】
運動会ノ準備終タ。
シタバッテ明日雨ノ予報ダ。
(運動会の準備は終了した。
しかし、明日の天気予報は雨だ)
※引用欄を見出し語ごとに分けました。

【補足①:ンダバタテ】
見出し語の解説に「ンダテ」が見られたので
、当方にて下線を施しました。用例の「ンダ
バタテ」を「ンダテ」に置き換えても意味は
同じです。品詞については、逆接の接続詞と
しています。

【補足②:シタバッテ】
「シタバッテ」に「ンダバタテ」が対応し、
「シタテ」に「ンダテ」が対応します。いず
れも、逆接の接続詞としています。用例では
、「シタバッテ」の訳に「しかし」があてら
れています。

目次 ↑

青森(南部地方)
青森県南 岩手県北 八戸地方 方言辞典(寺井義弘, 1986年)
んだて んだって(副詞)
〔意味〕そうですが。
〔例〕
 んだてどもなね
 (そうですが、どうもなりません)。


んだたて(副詞)
〔意味〕そうだけれども。
〔例〕
 んだたて仕方ながべ
 (そうだけれども仕方がないでしょう
 ・いまさらどうにもならない)。

目次 ↑

第三版増補改訂 南部のことば(佐藤政五郎, 1992年)
んだって
〔意味〕だって・でも 「んだだて」と同じ。
〔例〕んだって変だな


んだたて
〔意味〕でも・だって・そうだが
〔例〕
 んだたて、おら嫁きたいの
 (でも、あたし嫁きたいの)

目次 ↑

秋田(全般)
秋田方言(秋田県学務部学務課, 1929年)
んだて(連)
〔意味〕さうだって、それだって。
〔例〕「んだって、知らなかったもの。」
〔方言採集地〕雄勝郡

んだたって(連)
〔意味〕だって。
〔例〕「んだたって やるもの。」
〔方言採集地〕南秋田郡・平鹿郡・雄勝郡

目次 ↑

秋田(県南)
おらほの言葉 西木村(佐藤ミキ子, 1997年)
ンダッテ
〔意味〕
 連語 :そうであっても。
 接続詞:しかし。それでも。

ンダタテ 連語
〔意味〕そうであっても。そうだとしても。
【補足】
この資料では、「ンダッテ」について、連語
と接続詞に分類してとりあげています。

目次 ↑

秋田(由利)
本荘・由利のことばっこ(本荘市教育委員会, 2004年)
んだたて・んだて・んだっても〔句〕
①だって。そうはいっても。でも。
〔例〕
んだたて 電車 おぐえで 間に合わねぁがったもの。
(だって、電車が遅れて間に合わなかったもの)

②・・・だけれども。だが。
〔例〕
何日ぶりがで 雨ふった んだたて
このぐれぁでは なっもならねぁ。
(何日ぶりかで雨が降った、だが
この程度では何にもならない)
【補足】
この資料では、見出し語の意味を①②に分類
してとりあげています。

目次 ↑

岩手・旧盛岡藩(中部)
おでぇあたっすか-花巻方言の整理と考察-(佐藤善助, 1976年)
ンダテ 接続
〔意味〕だって

目次 ↑

藩境北上市周辺の話しことば(1993年、及川慶郎)
んだって
〔意味〕そう言ったって

んだて
〔意味〕そうは言ったって

んだてこだて
〔意味〕何と言ったって

んだてすか
〔意味〕そうですか

んだたって
〔意味〕そうは言ったって
【補足】
この資料では、「んだ〜」の「だ」について
、「た」の右肩に小さい「△」を付けて鼻濁
音表記しています。

目次 ↑

岩手・旧仙台藩(内陸)
胆沢町史9 民俗編2(胆沢町, 1987年)
んだって
〔意味〕そうだって。そうだけれども

んだってなぁ んだってねぇ
〔意味〕そうだってね。でもね

んだってよー
〔意味〕でもね

んだたって
〔意味〕そうだって

目次 ↑

山形(全般)
山形県方言集(山形県師範学校, 1933年)
んだつて
〔意味〕さうですけれど
〔言〕ndatte
〔品詞〕連続語
〔使用地方〕庄内・置賜
〔用例〕
んだつて 先生が だめだて ゆた
(さうですけれど 先生が だめだと おつしやつた。)


んだて
〔意味〕さうですけれど
〔言〕ndate
〔品詞〕連続語
〔使用地方〕最上・村山・置賜
〔用例〕
んだて 都合が悪いもんださげ。
(さうですけれど 都合が悪いものだから。)

目次 ↑

山形県方言辞典(山形県方言研究会, 1970年)
ンダッテ(連語)
〔意味〕だって。しかし。ンダテとも。
〔分布地点〕置賜。村山。最上。

ンダタテ(連語)
〔意味〕しかし。そうだとて。
〔分布地点〕村山・最上・鶴岡

目次 ↑

山形(庄内地方)
庄内方言集 おらが庄内弁(佐藤俊男, 1984年)
んだって
〔意味〕そうであっても。

んだたって
〔意味〕そうであっても。

目次 ↑

庄内方言辞典(佐藤雪雄, 1992年)
ンダッテ ンダテ
〔意味〕
連語。そうであっても。
接続詞。しかし。それでも。

ンダタテ
〔意味〕
連語。そうであっても。そうだとしても。
接続詞。しかし。
庄内一般。
【補足】
この資料では、「ンダッテ・ンダテ・ンダタ
テ」の意味を、連語・接続詞に分けています。

目次 ↑

山形(置賜地方)
読む方言辞典 置賜のことば百科(菊地直, 2007年)
んだて [接続詞]
〔意味〕
 かといって。そうではあるが。だけど。
 とは言うものの。
〔例〕
 「んだて 違うどこ あんでねえか」
〔解説〕
 先行の事柄に対し、それを承認しながら
 も、それと矛盾する事柄を述べるときに
 用いる。

んだたて [連語]
〔意味〕そうだろうけど。だけれども。
〔例〕
「んだたて こっちの方 ええみてえだ」
「そげにゆわっちぇも んだたて」

目次 ↑

宮城(仙台)
仙台の方言(1938年、土井八枝)
標準口語と仙台方言との対照

六十、
だが、だいぶん ねむさうだね。
んだって なんだが ねむそーだな。
【補足】
この資料では、「だが」(逆接の接続詞)の
訳に「んだって」をあてています。

目次 ↑

宮城(県北)
古川市史 下巻(古川市史編纂委員会, 1972年)
んだて
〔意味〕それはそうと

目次 ↑

宮城(三陸圏)
石の巻弁 語彙編(弁天丸孝, 1932年)
んだたて
〔意味〕そうだって、けれども、等の意。
〔例〕
 「あんだも一緒にえばえちゃ」
 「んだたてお留守居ねぐなるぉ」

目次 ↑

けせんぬま方言アラカルト(菅原孝雄, 2006年)
んだって
〔意味〕でも。ためらう、しり込みすること。
〔例〕「んだって天気予報は雨降りだっつよぉ」

目次 ↑

宮城(県南)
白石市史3の(3) 特別史(下)の2(白石市史編さん委員会, 1987年)
 宮城県白石地方の方言と訛語(菅野新一)
んだって
〔意味〕
 そうだけれども・そうはいうものの・
 そうはいっても。
 ほだって(前述)、と同じ。

〔例〕
「んだって、おれは、嫌えなものは、嫌えなんだ」
「んだって、あの人は偉えど思う」。

目次 ↑

福島・全般
福島県方言辞典(児玉卯一郎, 1935年)
ンダッテ【句】
〔意味〕さうだけれども
〔使用地域〕中通り中部・会津・浜通り

目次 ↑

福島・会津
会津方部 方言の手引書(蜃気楼, 2008年)
んだって
〔意味〕そうだけれども
〔例〕んだって、兄(あん)ちゃだって悪りいだから。

目次 ↑

福島:中通り(中部)
どごんわらしえ 故郷福島県「正直」の言葉(鈴木節子, 2017年)
ん・・・
〔意味〕そう・・・
〔解説〕
だ(そうだ)」
だって(でも)」
【補足】
この資料では、「ん」に続く語として、「ん
だ」「んだって」などをとりあげています。

尚、資料名の「正直(しょうじき)」という
地名は、「福島県郡山市守山町大字正直」の
ことです。

目次 ↑

編集後記

かつての日高見国である東北地方の言語を未
来へ継承していくためには、公用語化が不可
欠です。

当方の提唱する標準東北語の用法は、国語の
東北版として、東北各地の言語資料を基に、
東北の広範囲に共通の用法で構成されており
、文章語として公文書や記事などに使うこと
を想定しています。

尚且つ、東北全土の言語に対応しているため
、東北各地の言語の地域公用語化にも貢献で
きるはずです。

当方では、標準東北語を、中国における北京
官話(普通語)に相当するものと位置付けて
いますが、「方言」から公用語化への脱却こ
そが、明治以降、自らの言語を否定され、劣
等感を植え付けられた東北の力を引き出す原
動力となるはずです。

編集者:千葉光

目次 ↑

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奥州東北語について

当方では標準東北語について、「奥州東北語
」という呼称を用いています(ただし、最終
的には「日高見語」が理想です)。

奥州とは、陸奥(青森・岩手・宮城・福島)
の別称ですが、「奥州藤原王国」の「奥州」
が、その支配領域である東北全土として認識
されているように、歴史的・慣習的に東北地
方全体を指して使われている現実があります。

また、室町時代に設置された「奥州総大将」
や「奥州管領」は奥羽を統括するための官職
ですが、これは当時の中央政権が「奥州」と
いう呼称を東北全土を指すものとして認識し
ていたことを示しています。

これらの歴史的な慣習に従い、当方では奥州
東北語の「奥州」を、東北全土を指す呼称と
して用いています。

尚、東北全体を指す呼称として、陸奥と出羽
をつなぎ合わせた「奥羽」という語がありま
すが、後ろにある出羽が陸奥に従属している
印象があり、当方としては使用を避けたい思
いがあります。

文:千葉光

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2/17/2026

博る:語源編

「博る」の語源について、東北各地の言語資
料を基に整理しました。

【参照】博る:用法編

編集者:千葉光

目次:

01. 語源
02. 語源探求 秋田方言辞典
03. 各地の言語資料より
 【青森】津軽 南部
 【秋田】全般 由利
 【岩手・旧盛岡藩】北部
 【岩手・旧仙台藩】沿岸
 【福島】会津 中通り南部
 【福島・浜通り】北部 南部
04. 編集後記

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語源

東北各地の言語資料では「博る」の成り立ち
について、牛馬の売買を生業とする「ばくろ
う(博労・馬喰)」という名詞が動詞化した
ものとする説が一般的ですが、語源を遡ると
、古代中国語の「伯楽(はくらく)」に辿り
着きます。

経路を整理すると、次の通りです。
伯楽(はくらく)→博労・馬喰(ばくろう)
→ばくろうする(サ変動詞)→ばくろする・
ばぐろする→ばぐる・ばくる

江戸時代中期の雑俳に「ばくろうをして〜」
とあり、この時代には江戸において、サ変動
詞として使われていた形跡がありますが、四
段(五段)動詞化した「ばぐる」が、どの時
代から使われるようになったのか、文献から
探ることは難しいようです。

目次 ↑

語源探求 秋田方言辞典

次の資料では、「ばくる」「ばくろう」の語
源について、とりあげています。

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語源探求 秋田方言辞典(中山健, 2001年)
ばくる〔他ラ五〕
〔意味〕交換する。物と物とをとりかえる。

〔バクル〕北秋田郡・平鹿郡
〔バグル〕北秋田郡・山本郡・南秋田郡・仙北郡・平鹿郡・雄勝郡・由利郡

〔例〕
「オ前ノ 米ド オレノ サヅマエモド バグラネァガ」
「林檎ド 柿ド バグルガ」

〔語源考察〕
ばくろう〔馬喰・博労〕〔名〕
馬や牛を交易売買する人、またその職業。こ
れから転じて、物と物を交易することの意に
用いられる。この物と物を交易する意の「ば
くろう」をバクル(ラ五)と動詞化した語。
ばくろう〔名〕〔他サ変〕
〔意味〕交換。交易。とりかえっこ。
〔バグロ〕平鹿郡
〔例〕「コノ 林檎ド ソノ 柿ド バグロシネァガ」

〔語源考察〕
ばくろう〔馬喰・博労〕〔名〕
(「はくらく(伯楽)」の転)
馬や牛の交易売買をする人、またその職業。
これから転じて、物と物とを交換すること、
交易の意に用いられる。

*雑俳-大福寿覚帳「人げんのばくろうをし
 てくてとおる」〈『日本国語大辞典』〉
 ―これに基づくもの。
※引用欄を見出し語ごとに分けました。

「バグル」「バクル」の秋田県内における分
布は、濁音化した「バグル」が圧倒的に多い
ですが、これは、二音目の「カ行」が濁音化
する東北共通の法則に基くものです。

語源考察では、「ばくる」について、「ばく
ろう(博労・馬喰)」を動詞化した語として
います。

その「ばくろう」については、「伯楽(はく
らく)」の転であること、馬や牛の交易売買
をする職業から、物と物とを交換する意に用
いられるようになったとしています。

尚、文献として、江戸時代中期の大福寿覚帳
(だいふくじゅ-おぼえちょう)をとりあげて
います。この時代には、江戸において、「ばく
ろうをして〜」と、サ変動詞として使われて
いたことが窺えます。

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語源探求 秋田方言辞典 ↑

各地の言語資料より

青森・秋田・岩手・福島の言語資料より、語
源に関する箇所をとりあげます。尚、引用欄
外の補足は当方によるものです。
*( )内は著者名・発行年

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青森(津軽地方)
津軽弁の世界 その音韻・語源をさぐる(小笠原功, 1998年)
ばぐる
〔意味〕とりかえる
〔例〕
「お前(め)の大きビダ(めんこ)一枚ど、
吾のタマコ(ビー玉) つど、ばぐらねが。
五つ出しても良(え)や。」←ばくろう(する)。

〔解説〕
「ばくろう(博労)」は、馬・牛などの家畜
の売買の仲に入る人。津軽弁の「ばぐる」は
、博労の仕事と同じく、物と物とを交換する
という動詞。

「博労、バクラウ。馬商人也(節用集)」→はくらく

「はくらく(伯楽)は、中国の春秋時代、馬
の良否を見分ける名人で、駿馬(しゅんめ)
を発見、育てた人として有名。

「日本にも亦馬を相する人を呼んで伯楽と云
ふなり(庭訓抄)」

【補足】
この資料では、「ばぐる」の語源について、
「博労」および「伯楽」を挙げています。

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各地の言語資料より ↑

青森(南部地方)
教育適用 南部方言集(簗瀬栄, 1906年)
ばくる
〔解説〕
品物を交換することにて馬を売買する馬喰
(ばくらふ)の義より轉(てん)じたるか

【補足】
この資料では、「ばくる」について、馬喰の
義より転じた語ではないかとしています。

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青森県南 岩手県北 八戸地方 方言辞典(寺井義弘, 1986年)
ばぐる(動ラ四)
③ばぐるは博労(後述)の動詞化か。


ばぐろ(名)古語
①馬の仲買人。古くは伯楽という。伯楽は天
馬を守る星の名。後に馬を見る人となる(支
那の故事)。伯楽(ハクラク)→博労(ハク
ロウ)。馬食(バクロ)う(交換 (バクル)
人か)の意は俗説。


㋑伯楽と云ふ事、京都にて室町より始まれり
。又伯楽は戦国の時に馬を相する人なり。是
によって日本にも亦馬相をする人を呼んで伯
楽と言ふなり。<庭訓抄下>

㋺周の人、姓は孫、名は陽。
○及至伯楽日我善治馬<荘子 馬蹄>
○伯楽一過冀北之野、馬群遂空。<韓愈・送温処士序>

【補足】
この資料では、「ばぐる」について、「博労
」の動詞化した語か?としています。

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各地の言語資料より ↑

秋田(全般)
秋田の方言(打矢義雄, 1970年)
バグる
〔意味〕交換する。
〔解説〕
伯楽は馬の交換をも職業とし、日本ではこれ
を「ばくろう」といった。それを動詞にする
と「バグる」となる。

【補足】
この資料では、「バグる」について、「伯楽
」に由来する「ばくろう」を動詞にしたもの
としています。

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秋田ことば語源考(三木藤佑, 1996年)
バグル

〔解説〕
「俺の鉛筆ど、おみゃの消しゴムどバグロデ
ァ」とか、「道具なんぼ、バグタッテ腕上が
るわげぇねぇ」とか使われている。「取り替
える」こと「交換する」ことが「バグル」こ
とだ。
(中略)

この語のもともとは、漢字の「博」だと考え
られる。「博」には「バク」という読みもあ
り、「取る。取得する」意味になっている。

また、「博」だけで「ばくちなどの金品を賭
けた勝負事」の意味もある。

「博労」(ばくろう)は、馬の取引に従事し
た者だが、後には「交換」の意味が忘れられ
て「馬喰」「馬労」と書かれるようになって
しまった。

筆者は、方言「ばぐる」は「博る」であった
と考えている。そして、もともとは「取引す
る」意味だけだったのが、いつの間にか「交
換」に変わっていったのだと思う。

馬の取引の博労から「バグル」の方言が始ま
ったとする説があるが、逆だと思う。「博る
」という動詞がまずあって、これから博労が
派生していったと考えたい。

【補足】
この資料では、「バグル」は「博る」であっ
たとし、「博る」という動詞から「博労」へ
派生していった可能性について指摘していま
す。

東北全体の資料では、「博労」から「博る」
へ派生していったとする見方が一般的ですが
、必ずしも確定的とは言えません。

したがって、定説とは真逆の、この見方につ
いても、貴重な指摘であり、充分に価値があ
るといえます。

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各地の言語資料より ↑

秋田(由利)
村の方言集(村松長太, 1965年)
バグル
〔解説〕
馬喰が牛馬交換の仲立を職業とするところか
ら出たことば、全県的に共通する。

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各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(北部)
軽米・ふるさと言葉(軽米町教育委員会, 1987年)
バグル
〔意味〕交換すること
〔解説〕「バグロー」の動詞化
〔例〕時計とラジオとバグル。
バグロー
〔解説〕
牛馬の売買を業とする人 馬喰(古語)
「ばくろう(馬を売買・周旋する人。物と物
とを交易すること)」。
※引用欄を見出し語ごとに分けました。

【補足】
この資料では、「バグル」について、「バグ
ロー」の動詞化したものとしています。

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各地の言語資料より ↑

岩手・旧仙台藩(沿岸)
気仙ことば(佐藤文治, 1965年)
バクル(動)
〔解説〕
交換すること。多少は金目の物、時計とガス
ライータを取換えるのなどがこれ。「伯楽」、
「ばくろう」に、由来するか。

この商談は一種の賭けのようなもので、馬を
とり換えて損することも得することもある。
互いにそれぞれの臍算盤で交換が成立する。

だからよく「思い切ってバクったよ」などと
言う。

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各地の言語資料より ↑

福島・会津
会津高郷村史3 民俗編(高郷村史編さん委員会, 2002年)
ばくる
〔解説〕馬喰、伯楽からでた言葉。物々交換のこと

【補足】
この資料では、「ばくる」について、「馬喰
、伯楽からでた言葉」としています。

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各地の言語資料より ↑

福島:中通り(南部)
岩瀬郡誌(岩瀬郡役所, 1923年)
バクル
〔意味〕馬喰の活用にて交換の意に用う。

【補足】
この資料では、「バクル」ついて、「馬喰」
を活用(動詞化)したものとしています。

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各地の言語資料より ↑

福島:浜通り(北部)
相馬方言考(新妻三男, 1930年)
バクル(動)
〔意味〕交換する。
〔例〕俺の筆、お前の筆とバクッペ。
〔解説〕博労(馬喰)が馬を交換するより出たか。
【補足】
この資料では、「バクル」の由来について、
博労(馬喰)を挙げています。

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各地の言語資料より ↑

福島:浜通り(南部)
いわき方言(高木稲水, 1975年)
ばぐる(動詞)
〔意味〕交換する。
〔解説〕
博労(ばくろう)という名詞が、四段活用の
動詞となったものである。羽織という名詞が
「はおる」という「ら行四段」の動詞となる
と同じである。

【補足】
この資料では、「ばぐる」について、「博労
」が動詞化(四段活用)したものとしてい
ます。

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各地の言語資料より ↑

編集後記

かつての日高見国である東北地方の言語を未
来へ継承していくためには、公用語化が不可
欠です。

当方の提唱する標準東北語の用法は、国語の
東北版として、東北各地の言語資料を基に、
東北の広範囲に共通の用法で構成されており
、文章語として公文書や記事などに使うこと
を想定しています。

尚且つ、東北全土の言語に対応しているため
、東北各地の言語の地域公用語化にも貢献で
きるはずです。

当方では、標準東北語を、中国における北京
官話(普通語)に相当するものと位置付けて
いますが、「方言」から公用語化への脱却こ
そが、明治以降、自らの言語を否定され、劣
等感を植え付けられた東北の力を引き出す原
動力となるはずです。

編集者:千葉光

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2/01/2026

【きかねァ】語源編

東北各地の言語資料を基に、「きかねァ」の
語源について整理しました。
※参照:【きかねァ】用法編

編集者:千葉光

目次:

語源
 ・ 聞(利)かぬ気
 ・ 聞かない(の形容詞化)

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語源

語源について、東北各地の言語資料を基に、
次の二系統に分類しました。
聞(利)かぬ気
【青森】津軽弁の世界〔完〕(小笠原功, 2001年)
【岩手】遠野方言誌(伊能嘉矩, 1926年)
【宮城】細倉の言葉(世古正昭, 1956年)

聞かない(の形容詞化)
【秋田】語源探求 秋田方言辞典(中山健, 2001年)
【岩手】気仙ことば(佐藤文治, 1965年)
【福島】会津ことば散歩(江川義治, 1979年)

系統ごとに、次項にて整理しました。

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聞(利)かぬ気
津軽弁の世界〔完〕(2001年、小笠原功)
きかね
〔意味〕勝ち気な。
〔例〕 「暴える(あばれる)馬(ま)ど、
 きかね女(おなご)さだきゃ(には)手ば出しなて、
 昔がら喋らえでるだね(のだよ)。
 蹴とばさえで(されて)、踏まえで、
 殺さえで終(しま)るだて(だって)。」

きかない。
「き(聞・聴)かない」の「きく」は、
 この場合は、
 相手の言葉や意見を受け入れる、
 承知するという意で用いられている。
 「ない」は、古くは「ず」という
 打消しの助動詞であったが、
 中世、関東方言として
 形容詞的な「ない」という表現が現われ、
 明治期、小学読本から
 共通語として定着した語である。

津軽弁の「きかね」は、
「聞かぬ気(だ)」
「聞(利)かん気」と同義の語で、
他人の話や意見を耳や心に入れず、
人に譲ったり負けたりすることを
激しく嫌うような、
勝ち気、意地っ張りな性格を表わす
形容動詞として用いられている。

また、「きかね」に、
サ変動詞の連用形の「し」
(津軽弁では「へ」と訛る)を挿入して
強調して「きがへね」とも表現されている。

「これを聞きて、ましてかぐや姫きくべくもあらず(竹取物語)」
「さあ、きかぬ気の凄傾城(眉斧目録)」。

遠野方言誌(1926年、伊能嘉矩)
キカナイ(キカナイ、ガギ)
キカナクナル

〔意味〕
アバレ(アバレ児)アバレル
キカヌキの轉

細倉の言葉(1956年、世古正昭)
きかない(形)(nɛː )

〔意味〕
 気ノ強イ、横着ナ、勝気ナ。
 言ウコトヲ キカナイから出たのではなく、
 寧ろ所謂「利カヌ気」であろう。

〔例〕
 「キカネェ子ダコト」
 (何と横着な子だろう)

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②聞かない(の形容詞化)
語源探求 秋田方言辞典(2001年、中山健)
きかない〔形〕

〔意味〕勝ち気だ。負けん気だ。荒っぽい。乱暴だ。腕白だ。

キカネァ:
 鹿角郡、北秋田郡、山本郡、南秋田郡、秋田市
 河辺郡、仙北郡、平鹿郡、雄勝郡、由利郡

キガネァ:仙北郡、由利郡
キカネ:山本郡、南秋田郡
キカナイ:南秋田郡

〔例〕
「ホントニ キカネァ ワラシダ」
「キガネアンバガリデ ナンモ 分ガラネァナダ」
「アンマリ キカネァグ スルナ」

〔語源考察〕
聞かない〔連語〕(「聞かぬ」とも)
〈きく〔聞〕〔他カ五(四)〕の未然形に
打消しの助動詞「ない」
または「ぬ」の付いたもの〉
なかなか人の言葉に従わない。
がんこである。

*浮世草紙・浮世栄花一代男-四・三
「此ちぎりいつまても
かはるなかはらじと思ひしに、
家中に聞(きか)ぬ男ありて
其御いたはりあそばしける」

*改正増補和英語林集成
「ナカナカ キカナイ ジョジョウフダ〈『日国』〉」

この「聞かない」の形容詞化したもの。
必ずしも悪い意味で言うのでなく、
「アノ子ァ ナガナガ キカネァ ドゴ アル」などと、
「みだりに人の言いなりにはならず、
自主的で見どころがある」の意で
いうこともある。

〔注〕打消しの助動詞(2)
ない〔助動〕活用語の未然形に付き、
打消しの意を表す。
近世では稀に
「あらない」があるが、
現代語では「ある」には付かない。
サ変には「し」に付く。

基本形:ない
未然:なかろ
連用:なく、なかっ
終止:ない
連体:ない
仮定:なけれ
活用の型:形容詞型

「ない」は文献上、
室町末期から関東方言として現れる。
活用形の完成した近世後期でも、
打消しは「ない」より
「ぬ」が一般的であるが、
明治以後、国定の読本をはじめ
口語文の標準としては
「ない」に代わられるに至った。
(『日本国語大辞典』〈補注〉参照)

気仙ことば(1965年、佐藤文治)
キカネァ(形)

「聞かない」か。
けんかに強い者、
議論で相手に譲らない者、
荒っぽい遊びをする子供、
これらはすべてキカネァ人、
キカネァ子供。
人の助言や注意を聞こうともしない、
ということからこう言う。

会津ことば散歩(1979年、江川義治)
きかねい

「あいつは ふんとに きかねい」というコトバをよく聞く。

~中略~

「きかない」は、
心が強い、意地・根性があるというよりは、
むしろ強情張りの人間で、
あくまで自己の主義主張を無理にも通す、
そういう人をいう。
例えてみれば、
青森地方の方言で「じょっぱり」、
熊本地方の「もっこす」に
似たコトバではなかろうか。

正直にいえば、会津人は、
かたくなに意地を張るところがある。
正しい筋はあくまでも通すことは良いことだが、
片意地にわかり切ったことを
、 体面上からがむしゃらに
無理やり主張する面もないではない。

このような強情を張ることが、
会津地方で「きかねい」というのだが、
その語源は、
他人の言うことを意に介せず、
全く聞き入れない、
つまり聞かないことか、
あるいはまた、
他人がいう意見、
その教えなどを
いくら言っても効(利)かない、
という意味のいずれかであろう。

ここまで二系統に分類して語源について整理
しましたが、どちらかが正しいということで
はなく、「利かぬ気」と「聞かない」が複合
的に形容詞化したものと捉えた方がよいかも
しれません。

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語源 ↑

1/11/2026

凍ばれる(しばれる)

奥州東北語(標準東北語)および東北各地の
言語の公用語化の一環として、各地の言語資
料を基に、ここでとりあげる語の用法につい
て整理しました。

編集者:千葉光

目次:

01. 意味
02. 活用
03. 語源
04. 各地の言語資料より
 【青森】全般 津軽 南部 下北
 【秋田】全般 県北
 【岩手:旧盛岡藩】北部 盛岡 中部
 【岩手:旧仙台藩】沿岸
 【山形】全般 庄内
 【宮城】県北 三陸圏 県南
 【福島:中通り】中部
05. 編集後記

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意味

標準東北語としての意味や漢字表記について
整理しました。
凍ばれる・凍ばえる

〔読み方〕しばれる・しばえる
〔意味〕厳しく冷え込む・酷く冷える
〔品詞〕動詞(ラ行下一段活用)
〔漢字表記〕「凍みる・凍み腫れる」に基づく

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活用

「凍ばれる」の活用について整理しました。

【活用】
【活用】凍ばれる
参考:【え・あ中間音】母音・子音の一覧

ただし、東北各地の資料の用例には、未然形
・仮定形・命令形が、当方の調べた限りでは
見当たりません。日常会話で使われる場合、
ほとんどは終止形・連用形に限られてくるた
めと思われます。

尚、活用に付いては、次の津軽の資料を参考
にしました。

津軽木造新田地方の方言(田中茂, 2000年)
シンバレル
【意味】凍れる・寒さが厳しいこと
【品詞】動詞

【活用】
未然「シンバレね」
連用「シンバレしじゃ」
終止「シンバレル」
連体「シンバレル時」
仮定「シンバレレば」
命令「シンバレレ」「シンバレロ」
となる。下一段活用である。

【音韻】
「シ」は母音が「イ」と「ウ」の間の発音の
母音である。「シ」と「バ」の間に撥音「ン
」が入る。これは濁音「バ」の前に「ン」が
入るということである。「レ」は、日常の会
話の中では、子音が脱落して「エ」になるこ
とも多い。「シンバエル」

【その他】
原形は、何だろう。よく判らない。「縛る」
とでも関係あろうか。

【用例】
今日モ シンバレルキャネシ。
(今日もひえますねぇ)

活用 ↑

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語源

次の資料では、語源について詳細にとりあげ
ています。
※引用欄外の補足は当方によるものです。

目次 ↑

語源探求 秋田方言辞典(中山健, 2001年)
しばれる〔自ラ下一〕

〔意味〕厳しく冷え込む。
〔シバレル〕鹿・北・山・南
〔例〕「今夜バ ホントニ シバレルナ」

《しばれる》
 北海道 青森 岩手 宮城栗原郡・石巻 山形
 新潟佐渡・岩船郡
 〈『日本方言大辞典』『北海道方言辞典』〉

〔語源考察〕
単に寒いというのではなく、寒さが厳しく、
およそ水分・湿気があるものはコチコチに凍
結するような場合の感じを表すことば。

この語は北国への旅情を誘う詩的な響きを持
つが、実は命にかかわるほどのものすごい寒
さを表すもので、このような状態の中で、毎
年雪道の中で凍死する人も出る。

語源については諸説がある。

(中略)

ⓔ凍傷をいうシミバレ(凍腫)は、シンバレ
、シバレと変化した。北海道語として有名な
「しばれる」という語は、語源的にはおそら
くこのシバレと関わりをもつだろう。
(『日本の方言地図』)

(中略)

——ⓔ凍ミ腫レルの連用形の名詞化のシミバ
レ、シンバレ、シバレが凍傷の意となる一方
、シミバレルがシンバレル、シバレルと転じ
て凍傷ができるほど厳しく冷え込む意となっ
たという考え方は、シミバレ、シンバレ、シ
バレ(凍傷)の語が実在するだけに説得力が
あろう。

けっきょくⓐかⓔであるが、ⓔに従っておき
たい。

【補足】
この資料の「語源考察」では、語源について
他の言語資料がとりあげている説をⓐ〜ⓔの
五項目に分け、考察していますが、著者自身
はⓔに従っておきたいとしています。

著者がⓔで解説した経路を漢字表記に置き換
えると、次のようになります。
凍み腫れる→凍みばれる→凍んばれる→凍ばれる

また、ここでは引用を割愛しましたが、ⓐ〜
ⓒの解説では「凍みる・凍む・凍み晴れる」
を挙げています。

語源と断定できるものはないようですが、い
ずれにしても、「凍みる」と関連する語と捉
えるのが妥当といえるかもしれません。

語源 ↑

目次 ↑

各地の言語資料より

東北各地の言語資料より、意味・用例などを
整理しました。尚、引用欄外の補足は当方に
よるものです。

*言語資料名の( )内は、著者・発行年

目次 ↑

青森(全般)
東奥日用語辞典及青森県方言集(東奥日報社, 1932年)
シバレ(又はシンバレ)
〔意味〕凍傷、しもやけ

シバレル
〔意味〕寒気身に泌む

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

青森(津軽地方)
津輕方言集(齋藤大衛・神正民, 1902年)
しばれる
〔意味〕カンズル(寒)、烈シキ寒サノコト
〔解説〕寒サ烈シク、身ヲ縛ラルヽガ如キヨリ云フカ

しばれ
〔意味〕シミバレ、シモヤケ、ユキヤケ(凍瘡)
    腫物(ハレモノ)ノ名
〔解説〕
 ◯シモヤケ、ユキヤケノコト
 ◯手足ノ端ナド、烈シキ、寒サニ傷メラ
  レテ、痒ク、痛ク、腫レテ、瘡(カサ)
  トナルモノ
 ◯シミ腫(バレ)ノ義ニテ云フカ
【補足】
名詞形の「しばれ」については、原形として
「しみ腫れ」を挙げています。

目次 ↑

津軽のことば 第五巻(鳴海助一, 1958年)
しばえる・しばれる 動詞

〔解説〕
これは、単に「寒い」というのとは大いに異
なる。寒さが厳しくて、およそ水分・湿気の
あるものは、みなコチコチに凍結する、とい
うような場合に用いる。もちろん多少寒暖の
差があるにしても......。

だから、春充き、どんなに風が寒くても、秋
おそく、みぞれが降る頃でも、ほとんど「
ばえる
」とはいわない。

寒中月のある晩など、歩けば雪道がキリキリ
と鳴る。そんなとき、「今夜ずいぶんしばえ
でラデァ。」などという。また「寒あけても
しばれァ、なんもおちない(寒気が衰えな
い)」など。

この語源も不詳。「冷え栄え」か「冷え張る
」か。

ただし、「冬・ふゆ」は「冷ゆ」からきたも
の。何か手掛りが得られそうだが......。
後考にまつ。

〔例〕
※コンニャ、ジンブしばえデキタデァ。
「ホシモジ」オンニャサカケルベァ。
◯こんやは、ずいぶん冷えてきましたゼ。
ほしもち(干餅・凍り餅)を、庭に掛けましょうよ。
【補足】
「しばえる」の「え」はラ行の子音が抜け落
ちたものですが、この発音法則は東北六県共
通に見られます。

解説にあるとおり、この語は厳しい寒さを表
す動詞です。また、語源については不詳とし
ています。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

青森(南部地方)
青森県五戸語彙(1963年、能田多代子)
シバレル
〔意味〕寒気の烈しこと。

目次 ↑

青森県南 岩手県北 八戸地方 方言辞典(寺井義弘, 1986年)br />
すばれる(動ラ下)
〔意味〕寒さのきびしいこと。(語源不明)

すばれ(名)
〔意味〕寒気。語源に諸説ありて決めがたし。
【補足】
語源に諸説あり、決めがたいとしています。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

青森(下北地方)
下北・薬研の風物誌(佐藤徳蔵, 1981年)
シバレル
〔意味〕寒さがきびしい

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

秋田(全般)
秋田方言(秋田県学務部学務課, 1929年)
しばれる(形)
〔意味〕さむい(寒い)。
〔方言採集地〕鹿角郡・北秋田郡
〔例〕「今日はひどくしばれる。」

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

秋田(県北)
秋田県北部方言考(藤盛直治, 1974年)
シバレ・ル
〔意味〕凍る しばれる。寒気の厳しきこと。

シバレ・ユキ
〔意味〕ばれ雪。凍て雪。凍りて降る雪。粉雪。湿り雪の対。
【補足】
この資料では、名詞形「しばれ」の派生形と
して「しばれ雪」をとりあげています。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(北部)
軽米町誌(軽米町誌編纂委員会, 1975年)
しばれる
〔意味〕寒気がきびしい

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(盛岡)
盛岡のことば(佐藤好文, 1981年)
スバレル【しばれ・る】(動)
〔意味〕きびしく冷えこむ。

スバレ【しばれ】(名)(動詞「しばれる」の連用形の名詞化)
〔意味〕きびしい冷えこみ。酷寒。シバレ

スバレユギ【しばれ-ゆき】(名)
〔意味〕酷寒の日などに降る粉雪。
【補足】
動詞「スバレル」の連用形の名詞化したもの
として「スバレ」を、また、その派生形とし
て「スバレ雪」をとりあげています。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(中部)
遠野方言誌(伊能嘉矩, 1926年)
シ(ス)バレル
〔意味〕厳しき寒さ
【補足】
見出し語にあるとおり、「シ」が「ス」とも
発音される地域が東北の広範囲にあります。

目次 ↑

おでぇあたっすか-花巻方言の整理と考察-(佐藤善助, 1976年)
シバレル 動
〔意味〕ひどく冷える
〔解説〕零下十度以下の気温をさす
【補足】
各地の資料では、「厳しい寒さ」という解説
が多く見られますが、この資料では、「零下
十度以下の気温」と具体的に数値を出してい
ます。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧仙台藩(沿岸)
気仙ことば(佐藤文治, 1965年)
シバレル(動)

〔解説〕
名詞はシバレ。語系未考。
厳しく寒くなること、またその寒さ。これを
言うのは、雪の降っている時とか、吹雪の時
などでなく、よく晴れていて寒い時に限るよ
うだ。

「けさはシバレルなあ」と言う時は、きっと
空は晴れている。「シバレル晩だ」という時
は、雪もよいでなく星空。 すると「凍み晴
れる」の原形が想起される。
【補足】
名詞として「シバレ」を、原形として
「凍み晴れる」を挙げています。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

山形(全般)
山形県方言辞典(山形県方言研究会, 1970年)
シバ・レル(下一)
〔意味〕酷く冷える。
〔分布地点〕北村山郡・東田川郡

スバ・レル(下一)
〔意味〕ひどく冷える。
〔例〕
「今夜みでに、ぴりぴり——時」
「スバレで、段々氷(スゴ)コ張って来た」
〔分布地点〕最上郡
【補足】
見出し語にあるとおり、「シ」が「ス」とも
発音される地域が東北の広範囲にあります。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

山形(庄内地方)
庄内方言集 おらが庄内弁(佐藤俊男, 1984年)
すばれる
〔意味〕ひどく寒い。

目次 ↑

庄内方言辞典(佐藤雪雄, 1992年)
シバレル 動詞
〔意味〕寒くて凍る。ひどく冷える。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

宮城(県北)
細倉の言葉(世古正昭, 1956年)
しばれる(動,ラ行下一段)
〔意味〕寒イ,冷エ込ム。
〔解説〕
寒イと言つても底冷えするように寒いこと,
身にじんじんとしみるような寒さを表現する
。無論動詞であるから寒イと訳さず、寒サ身
ニ沁ムとでも訳すべきであろう。骨身にこた
えて体の固くちぢみあがるような感じのよく
出た傑作方言の一つであろう。

目次 ↑

宮城県史20 民俗Ⅱ(宮城県, 1960年)
 方言(藤原勉)
しばれる

〔解説〕
寒さの凍みとおること。
しみれる>しびれる>しばれるか。
栗原郡。山形・秋田・青森・岩手県 
【補足】
使用地域に宮城県北の「栗原郡」とあります
が、当方にて調べたところ、宮城県南の白石
市の言語資料にも「すばれる(しばれる)」
が見られました。

目次 ↑

古川市史 下巻(古川市史編纂委員会, 1972年)
すばれる
〔意味〕冷える

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

宮城(三陸圏)
石の巻弁 語彙編(弁天丸孝, 1932年)
すばれる
〔意味〕厳しい寒さの意。
〔例〕「今朝はたまげですばれすてすね」

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

宮城(県南)
白石市史3の(3) 特別史(下)の2(白石市史編さん委員会, 1987年)
 宮城県白石地方の方言と訛語(菅野新一)
すばれる(しばれる)
〔解説〕寒さのために手足がしびれる。すばる、ともいう。
〔例〕「今朝、起きて、すばれるので、寒暖計を見たら、零下六度だった」。
 

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

福島(中通り中部)
どごんわらしえ 故郷福島県「正直」の言葉(鈴木節子, 2017年)
しばれる
〔意味〕凍(い)て付く寒さのこと
〔例〕
 「いやー、今朝はしばれるない」
 「しばれる朝は凍豆腐(しみどうふ)がよくできんだとい」
 

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

編集後記

かつての日高見国である東北地方の言語を未
来へ継承していくためには、公用語化が不可
欠です。

当方の提唱する標準東北語の用法は、国語の
東北版として、東北各地の言語資料を基に、
東北の広範囲に共通の用法で構成されており
、文章語として公文書や記事などに使うこと
を想定しています。

尚且つ、東北全土の言語に対応しているため
、東北各地の言語の地域公用語化にも貢献で
きるはずです。

当方では、標準東北語を、中国における北京
官話(普通語)に相当するものと位置付けて
いますが、「方言」から公用語化への脱却こ
そが、明治以降、自らの言語を否定され、劣
等感を植え付けられた東北の力を引き出す原
動力となるはずです。

編集者:千葉光

目次 ↑

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7/21/2025

無慙え:用法編

奥州東北語の公用語化の一環として、東北各
地の言語資料を基に、「無慙え」の用法につ
いて整理しました。

編集者:千葉光

目次:

01. 意味
02. 活用
03. 漢字表記
04. 語源「無慚(むぞう)」
 - 語源探求 秋田方言辞典
 - 津軽木造新田地方の方言
 - 気仙ことば
05. 江戸時代の文献
06. 各地の言語資料より
 【青森】全般 津軽 南部
 【秋田】全般
 【岩手:旧盛岡藩】全般 盛岡 中部
 【岩手:旧仙台藩】内陸 沿岸
 【山形】最上
 【宮城】仙台 県北 三陸圏 県南
 【福島】全般 会津
 【福島:中通り】中部 南部
 【福島:浜通り】南部
07. 編集後記

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意味

無慙え

〔意味〕かわいそうだ・不憫だ・気の毒だ・哀れだ
〔品詞〕形容詞
〔漢字表記〕「無慙(むぞう)」に基づく
〔読み方〕
 むぞえ・むじょえ・むぜえ
 もぞえ・もじょえ・もぜえ

標準東北語としての読み方は、ここに挙げた
6通りを併用する形ですが、主な読み方は「
むぞえ」を想定しています。

目次 ↑

活用

「無慙え」の形容詞型活用および動詞形に
ついて整理しました。

【活用】無慙え
【活用】無慙え
<参照>
【え・あ中間音】表記法
わらし(童子)

連用形「無慙ぐねァ」の「ねァ」を変体仮名
で表記しています。連体形の「わらし」は、
「子ども」という意味です。

目次 ↑

漢字表記

漢字表記は「無慙(むぞう)」に基づきます。

「語源探求 秋田方言辞典」では、ムゾイ類
の形容詞は、中世語の形容動詞「むぞう(無
慙)」の語幹に形容詞語尾が付いたものであ
るとしています。

また、青森・岩手の言語資料にも、「むぞう
(無慙)」をとりあげているものが見られま
す。

これら東北各地の言語資料に基づき、漢字表
記を「無慙え」としています。

<参照>
語源探求 秋田方言辞典
津軽木造新田地方の方言
気仙ことば

目次 ↑

語源「無慚(むぞう)」

東北各地の言語資料では、「むぞえ」の語源
を、仏教用語である「無慚(むざん)」の変
化した「無慙(むぞう)」に求めています。

ここでは、語源も交えて解説している秋田・
青森・岩手の言語資料をとりあげます。

目次 ↑

語源探求 秋田方言辞典
語源探求 秋田方言辞典(中山健, 2001年)
むぞい・むぞけない・むぞさい〔形〕

(1)むごたらしい。残酷だ。
〔ムゾサエ〕雄勝郡

「戦争デ 人殺スナ、ホントニ ムゾサエ
 ゴドダナァ」


(2)かわいそうだ。気の毒だ。ふびんだ。
〔ムゾイ〕仙北郡
〔ムゾエ〕仙北郡・平鹿郡
〔ムジョイ〕鹿角郡
〔ムジョエ〕鹿角郡

「アンタ 子供ニ 仕事サセルナンテ
 ムゾエナ」


(3)かわいい。かわいらしい。
〔ムジョイ〕鹿角郡

「孫ァ ムジョクテ ムジョクテ タマラネァ」
〔語源考察〕

むぞう〔無慙〕〔名〕〔形動〕
(「むざん(無慙)」の転)

①残酷であること。乱暴なこと。
 また、そのさま。
②残酷な状態にあっていたましいこと。
 また、そのさま。かわいそう。不憫。
 気の毒。
③かわいらしいこと。また、そのさま。

——①がこの形容動詞の原義で、①→②→③
と転義したもの。(1)(2)(3)は、こ
れら「むぞう」の①②③に対応している。

方言のムゾイ類の形容詞は、この中世語の形
容動詞「むぞう(無慙)」の語幹に形容詞語
尾が付いたものである。

ただし③は九州方言で、海路から伝播したも
のであろう。
《補足》
・資料上は、見出し語は8通り有。
 (ここでは主要な3つを抜粋)
・「」は、ザ行・ダ行の鼻濁音。

引用欄を、用法・語源考察に分けて整理しま
した(語源考察は簡易的に抜粋)。

語源考察に基づけば、東北のムゾエ類の形容
詞は、中世の「むぞう(無慙)」の語幹に、
形容詞語尾「え」が付き、形成されたものと
なります。

目次 ↑

語源「無慚(むぞう)」 ↑

津軽木造新田地方の方言
改訂 津軽木造新田地方の方言 8巻(田中茂, 2020年)
モンジョエ
〔意味〕哀れだ 不憫だ 可愛そうだ
〔原形〕むぞい
〔品詞〕形容詞

〔活用〕
未然形:モンジョエ べ
連用形:モンジョグ・モンジョエヘ なる・あた
終止形:モンジョエ
連体形:モンジョエ づぎ(時)
仮定形:モンジョエ ば

〔音韻〕
「むぞい」が原形。方言では語頭の「む」が
転化して「モ」となっている。
二音節目の「ン」は濁音の直前に挿入された
撥音。
三音節目は「ぞ」が拗音化して「ジョ」とな
る。これも転化の一つなのだろう。「ぞ」→
「ジョ」の転化は津軽地域ではよくみられる
転化の形。
語尾の「い」は方言では「エ」となる。この
「エ」はやや「い」の方に寄った狭い口形で
発音されているという感じを受ける。

〔用例〕
マンダ 小学校ノ ワラシコダモノ
モンジョエヘ 見ンデラエネヘ アタ。
(まだ小学校の子だもの、可愛そうで
見ていられなかったよ)

〔語誌〕
「むぞい」の元になっている語は「むざん 
無慚・無惨」のようである。「無慚」は仏教
用語で罪を犯しながら恥じないこと、残酷で
あること、乱暴なこと、そして、残酷な状態
にあって痛ましいこと、不憫、気の毒という
意味でも用いられる語である。

(中略)

「むぞい」という形容詞の形は前述のように
方言では全国に見られるが、古語辞典・国語
辞典では求めることができない。

「むざん 無慚」の変化した形の語としては
「むぞう」という語がある。名詞としても形
容動詞としても用いられる語。

この資料では、前半部で見出し語の用法(意
味・音韻・活用・用例など)をとりあげ、後
半部では語源について考察しています。

「モンジョエ」の原形を「むぞい」とし、そ
の語源として、仏教用語の「無慚(むざん)
」と、その変化形である「むぞう」をとりあ
げています。

目次 ↑

語源「無慚(むぞう)」 ↑

気仙ことば
気仙ことば(佐藤文治, 1965年)
モゾイ(形)

〔意味〕
むごい、気の毒だ、可愛想だ、などの意

〔解説〕
宇治拾遺物語に「無漸」が「むぞう」と音便
になっているのがある。これの口語形「むぞ
い」から訛ったのではあるまいか。間投詞に
して「むぞうやな」、モゾヤナとなる。

目次 ↑

語源「無慚(むぞう)」 ↑

江戸時代の文献
江戸時代の方言辞書である浜荻(はまおぎ)
」に、「むぞひ」が見られます。

仙台方言音韻考(小倉進平, 1932年)
【浜荻】

むぢこひ
〔江戸〕むごらしひ
〔解説〕むずひ共、無告といふに同じ心也。

むぞひ
〔江戸〕むごい
〔解説〕これも無告の轉歟。
《補足》
 轉歟(てんよ):轉は転、歟(よ)は終助詞。

浜荻は仙台言葉(見出し語)と江戸言葉を対
照する構成になっています。「むぢこひ」に
「むごらしひ」が、「むぞひ」に「むごい」
が対応しています。

目次 ↑

各地の言語資料より

東北各地の言語資料より、意味・用例などを
整理しました。

*言語資料名の( )内は、著者・発行年

目次 ↑

青森(全般)
青森県方言集(菅沼貴一, 1936年)
モジョイ
〔意味〕不憫、いぢらしい
〔記号〕modʒoë
〔品詞〕形容詞
〔区域〕津軽
《補足》
見出し語の語尾は「イ」ですが、発音記号は
「エ」の中舌化である〔ë〕です。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

青森(津軽地方)
津軽語彙 第2編 一町田語彙(松木明, 1954年)
モジョエ(形)
〔意味〕可愛想な、不憫な
    モジョケネェと同じ意
〔例〕
 アノ ワラシァ モジョエ
 あの子供は不憫だな

目次 ↑

青森(南部地方)
南部のことば(佐藤政五郎, 1982年)
むじょい
〔意味〕可哀想な
〔解説〕あわれな。むこ゚い。むこ゚たらしいこと。

むぞい
〔解説〕むじょいと同じ

もじょい
〔意味〕不憫だ。
〔解説〕可憐な(是川)
《補足》
「むじょい」の解説に、鼻濁音表記「こ゚」
が使われています。

目次 ↑

青森県南 岩手県北 八戸地方 方言辞典(寺井義弘, 1986年)
むじょえ(形)
〔意味〕かわいそう。
〔解説〕無情の形容詞化か。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

秋田(全般)
秋田方言(秋田県学務部学務課, 1929年)
むぞえ(形)
〔意味〕かはいさうだ。
〔方言採集地〕仙北郡
〔例〕
「あんな子に仕事させるなんて、むぞえな。」

目次 ↑

岩手・旧盛岡藩(全般)
岩手方言集(小松代融一, 1959年)
(旧南部の部)

ムサエ
〔意味〕むごたらしい

ムジェ
〔意味〕可愛そうだ

ムジェッケ
〔意味〕可愛そうな

ムジョイ・ムジョエ
〔意味〕可愛そうな

ムゼ(ー)・ムゾエ
〔意味〕可愛そうな、あわれな

モゼ(ー)
〔意味〕ふびんである

モゾイ
〔意味〕可愛そうだ

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(盛岡)
盛岡のことば(佐藤好文, 1981年)
ムジェ(形)
〔意味〕
 かわいそうである。不憫である。
 気の毒である。→ムジョエ→ムゾエ
〔解説〕
「むぞう(無慙)」から変化したものか


ムジェカ゚ル
〔意味〕不憫がる。気の毒がる。
 →ムジョカ゚ル

ムジェグナル
〔意味〕可哀想になる。
 →ムジョグナル→ムゾグナル

ムジョエ
→ムジェ

ムジョカ゚ル
→ムジェカ゚ル

ムジョグナル
→ムジェグナル

ムゾエ
→ムジェに同じ。

ムゾグナル
→ムジョグナルに同じ。
《補足》
「カ゚」は鼻濁音

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(中部)
遠野民俗資料 遠野ことば(俵田藤次郎・高橋幸吉, 1982年)
ムジェ(ムゼェ)
〔意味〕可哀そう、気の毒、無慙(ムゼ)
〔例〕
 この寒空にムジョヤナ。ホンにすー。
 本当にムジェごどなす。

ムゼェ(ムジョヤナ)
〔意味〕可哀想

ムジョヤナ
〔意味〕可哀想

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧仙台藩(内陸)
黄海村史(黄海村史編纂委員会, 1960年)
むぞい
〔意味〕かわいそうだ。ふびんだ。

目次 ↑

胆沢町史9 民俗編2(胆沢町, 1987年)
むぜがった
〔意味〕かわいそうだった

もじぇ・もぜぇ
〔意味〕かわいそう

もぜぇ
〔意味〕あわれである

目次 ↑

平泉町史 自然編・民俗編1(平泉町史編纂委員会, 1997年)
 平泉の方言(小松代融一)
もぜ(-)
〔意味〕「むぜー」とも。可愛想だ。不愍だ。
〔例〕
「これぁ! もぜごどすんな=こら! 可愛想
 なこと(いじめたり むごいこと)するな」

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧仙台藩(沿岸)
気仙方言辞典(金野菊三郎, 1978年)
むじょえ「形」
〔意味〕かあいそうな。あわれな。
 →むぞえ。→もぞえ。

むぞえ「形」
〔意味〕ふびん。かわいそう
 →むじょい。→もぞえ。

もじょえ「形」
〔意味〕かわいそうな。ふびんな。
 →もぞい。→むぞい。
(古語)むごい、の転?

もぞえ「形」
 →もじょえ。→むぞえ。

もぞーやな「感」
〔意味〕もぞいやな。もぞえやな。可哀相だよまァ‼
    やな、は感嘆の助詞。
《補足》 記号→は「同意」の意味(凡例より)

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

山形(最上地方)
山形県方言辞典(山形県方言研究会, 1970年)
ムゾエ(形容詞)
〔意味〕かわいそう
〔分布地点〕新庄。最上大蔵・東小国。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

宮城(仙台)
仙台方言考(伊勢斎助, 1916年)
むぞい
〔意味〕カワイサウト云フコト

もぞい
〔意味〕アハレナル人ヲ云フ
《補足》
方言資料上では、見出し語の「ぞ」は「曾」
の変体仮名に濁点を付して表記。

目次 ↑

仙台の方言(1938年, 土井八枝)
もぞい(モゾコエ)形
〔意味〕かあいさう、いぢらしい。
〔例〕
「なんつもぞい話だこた」
(なんとあはれな話ですこと)

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

宮城(県北)
細倉の言葉(世古正昭, 1956年)
もぞい(形)

〔意味〕カワイソウナ,アワレナ。
〔解説〕
 現代婦人とはことかわつて、古くは女は
 可憐であると同時に、いたいけな弱々し
 いものであつた。そこで メグイ は又
 そのまま憐憫の意にも用いられ,発音も
 訛つて モゾイ となつたと言う。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

宮城(三陸圏)
北上町史 自然生活編(北上町史編さん委員会, 2004年)
もじぇ もぞい

〔意味〕不憫(かわいそうなこと)
〔例〕
とくともじぇくて やしぇねぐなる
(ものすごくかわいそうで やり切れなくなる)

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

宮城(県南)
白石市史3の(3) 特別史(下)の2(白石市史編さん委員会, 1987年)
 宮城県白石地方の方言と訛語(菅野新一)
もぞこえ(もぞこい)
〔意味〕
 かわいそうな・あわれな・気の毒な。
 もぞえ(もぞい)・もごえ(もごい)、
 ともいう。
〔例〕
 「なんつーもぞこえ話だごど」
 「あの女の話を聞いて、おれは、とっても
 (とても)もぞぐなった」。


もぞこがる
〔意味〕
 かわいそうに思う・あわれに思う・気の毒
 に思う。もぞがる、ともいう。
〔例〕
「あの家のおばんつァん(おばあさん)は、
 両親がいないので、孫たちを、うんと、も
 ぞこがって育てている」
「なんぼ、あの人ばもぞがっても、おれの今
 の経済状態では、どうするごどもでじねー
 んで、ほんとに残念だ」。
《補足》
見出し語に加えて、「もぞえ(もぞい)」
「もぞがる」を挙げています。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

福島(全般)
福島県方言辞典(児玉卯一郎, 1935年)
ムゼイ【形】
〔意味〕可愛さうだ
〔用例〕「むぜいごつた」(可愛さうな事だ)
〔使用地域〕会津

ムゾイ【形】
〔意味〕可愛さうだ
〔用例〕
「なんでむぜいかつこだんべい」
(なんと可愛さうな姿だらら)
〔使用地域〕会津・県南

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

福島(会津地方)
会津方言辞典(龍川清・佐藤忠彦, 1983年)
むじさい・むじさえ【形】
〔意味〕気の毒な
〔例〕あんなことして、——よ」
〔同義語的方言〕むぞい、むぞえ、むずせ

むぜえ【形】
〔意味〕気の毒
〔同義語的方言〕むぞおさえ、むぞおすぇえ
《補足》
この資料では、見出し語と同じ意味の語を
「同義語的方言」として載せており、「む
じさい・むじさえ」と同じ意味の語として、
「むぞい、むぞえ、むずせ」をあげていま
す。

目次 ↑

会津只見の方言(只見町史編さん委員会, 2002年)
むぜー・むぞーせー(形)(形動)
〔意味〕
 むぞうさい。かわいそうだ。
 不憫(ふびん)で同情に堪(た)えない。

〔例〕
「この寒いのに、あの子は傘もささねーで
 大雨に遭って——」

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

福島・中通り中部(安積地方)
郡山の方言(福島県郡山市教育委員会, 1989年)
ムゾエ(形)
〔意味〕可愛そうな。〈富田〉

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

福島・中通り南部(白河地方)
岩瀬郡誌(岩瀬郡役所, 1923年)
ムゾイ
〔意味〕むごいと同意又むずいとも云ふ
《補足》資料上は、下線ではなく●で強調。

目次 ↑

湯本山郷史 奥州白河領木地村とその周辺 上巻(星勝晴, 1973年)
む(も)ぞい
〔意味〕かわいそう。

目次 ↑

天栄村史 第四巻 民俗編(天栄村史編纂委員会, 1989年)
むぞい むごい
〔意味〕かわいそう

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

福島・浜通り南部(いわき地方)
いわき方言(高木稲水, 1975年)
むぞい(形容詞)
〔意味〕かわいそうだ。ふびんだ。
〔解説〕
 青森で「むじょけ」(かわいそう)という
 ことばがある。無情の意か。

目次 ↑

いわき市小川町地方の方言(草野二郎, 1988年)
もごえ(ご=鼻音)
〔意味〕むごい、かわいそう。
〔解説〕「もぞえ」ともいう。
〔例〕
 もごえごどして、あんにゃとえもどど
 一人づづわげだんだっちわえ。
《補足》
解説に「もぞえ」ともいうとあります。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

編集後記

かつての日高見国である東北地方の言語を未
来へ継承していくためには、公用語化が不可
欠です。

当方の提唱する文法・表記法は国語の東北版
(標準東北語)として、東北各地の言語資料
を基に、東北の広範囲に共通の用法で構成さ
れており、文章語として公文書や記事などに
使うことを想定しています。

尚且つ、東北全土の言語に対応しているため
、東北各地の言語の地域公用語化にも貢献で
きるはずです。

当方では、標準東北語を、中国における北京
官話(普通語)に相当するものと位置付けて
いますが、「方言」から公用語化への脱却こ
そが、明治以降、自らの言語を否定され、劣
等感を植え付けられた東北の力を引き出す原
動力となるはずです。

編集者:千葉光

目次 ↑

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6/01/2025

わがらねァ:用法編

奥州東北語の公用語化の一環として、東北各
地の言語資料を基に、ここでとりあげる語の
意味・用法などについて整理しました。

編集者:千葉光

目次:

01. 意味
02. 用例
 【駄目】助詞・接続助詞・助動詞
 【駄目】副詞・名詞・っこ
 【駄目】終助詞「す」・促音「っ」
 【駄目】連体形・連用形
 【駄目】行動に対して
 【駄目】目的・目標に対して
 【役に立たない】人・食べ物・製品
 【役に立たない】日用品など
 【出来ない】自分・目標・仕事・疑問形
03. 津軽にも見られる「わがらねァ」
04. 「わがる」
05. 各地の言語資料より
 【青森】南部 下北
 【秋田】全般 県南
 【岩手:旧盛岡藩】全般 北部 盛岡 中部
 【岩手:旧仙台藩】内陸 沿岸
 【山形】全般 庄内 最上 置賜
 【宮城】仙台 三陸圏 県南
 【福島】全般 会津 中通り北部
 【福島:浜通り】北部 南部
06. 編集後記

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意味


わがらねァ・わがんねァ

〔意味〕
①だめだ・いけない・役に立たない
②出来ない・不可能

〔表記〕
「ねァ(え・あ中間音)」は変体仮名で表記
<参照>
【え・あ中間音】表記法

この語には、原義である「分からない」と
いう意味もあり、東北各地の言語資料でも
とりあげていますが、ここでは①②の意味
に焦点を絞り整理しました。

目次 ↑

用例

東北各地の言語資料を基に、「わがらねァ」
の用例について、「駄目・役に立たない・出
来ない」の意味ごとに整理しました。

目次 ↑

【駄目】助詞・接続助詞・助動詞
「わがらねァ」が助詞・接続助詞・助動詞の
後ろに続く例について整理しました。
【駄目】助詞・接続助詞・助動詞
<参照>
【え・あ中間音】表記法
【ha助詞】表記法
【ごど:合略仮名】表記法

目次 ↑

用例 ↑

【駄目】副詞・名詞・っこ
「わがらねァ」が副詞・名詞・「っこ」の後
ろに続く例について整理しました。
【駄目】副詞・名詞・っこ

目次 ↑

用例 ↑

【駄目】終助詞「す」・促音「っ」
「わがらねァ」に、終助詞「す」・促音「っ
」が接続する例について整理しました。
【駄目】終助詞「す」・促音「っ」

目次 ↑

用例 ↑

【駄目】連体形・連用形
【駄目】連体形・連用形

連体形は「わがらねァ・わがんねァ」に名詞
が続きます。

連用形は未然形「わがら・わがん」に、助動
詞「ねァぐ(なく)」が接続します。

目次 ↑

用例 ↑

【駄目】行動に対して
【駄目】行動に対して

これは、他者の行動に対して否定する用法です。

目次 ↑

用例 ↑

【駄目】目的・目標に対して
【駄目】目的・目標に対して

目次 ↑

用例 ↑

【役に立たない】人・食べ物・製品
【役に立たない】人・食べ物・製品

これは、「役に立たない」のほか、物に対し
ては「使えない」という意味にもなります。

目次 ↑

用例 ↑

【役に立たない】日用品など
【役に立たない】日用品など

「役に立たない」は「使えない」に置き換え
ができます。

目次 ↑

用例 ↑

【出来ない】自分・目標・仕事・疑問形
【出来ない】自分・目標・仕事・疑問形
これは「出来ない・不可能」を表わす用法
です。自分・目標・仕事・疑問形に分けて
整理しました。

例文の「おら」は一人称、「おら方」は所
属を表わす代名詞です。

疑問形は「わがらねァ・わがんねァ」に「
のが?(のか?)」が接続します。

目次 ↑

用例 ↑

津軽にも見られる「わがらねァ」

青森・津軽地方では、「まえねァ・まねァ」
が「だめだ・いけない」の意味で使われてい
ますが、当方にて調べたところ、次の言語資
料に、津軽における「わがらねァ」が見られ
ました。

・津軽 森田村方言集(1979年)
・津軽方言考(1901年)
・東北方言集(1920年)

津軽 森田村方言集(木村国史郎, 1979年)
ワガラネ
〔意味〕駄目。いけない。やっては駄目。
《補足》
森田村は、2005年の広域合併により、現在は
「つがる市」の一部となっており、藩政時代
の中心都市である弘前市から北に40kmほどに
位置します。

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津軽方言考(武井水哉, 1901年)
 ※『津軽方言考』考(大嶋孜, 1984年)所収
わからない(形)
〔意味〕つまらない だめだなどにも用う。
〔解説〕
 東京にて金銭など望みに応ぜざるをいうと
 同語の転なり。

目次 ↑

東北方言集(仙台税務監督局, 1920年)
わからない(わかんない)【連語】
〔意味〕いけない
〔例〕そんなことをしては、わからない、およしなさい
〔使用地名〕宮北、宮南、青津、山村
この資料は、東北6県の代表的な語彙を収録
したものですが、使用地域に青津(青森県津
軽地方)が見られます。
(宮北・宮南は宮城県仙北・仙南地方、山村
は山形県村山地方)

目次 ↑

以上、これら三つの言語資料に、津軽におけ
る「わがらねァ」が見られました。

これを旧森田村など、あくまで津軽の一部の
地域に分布しているものとして捉えるべきか
、その一方で、津軽方言考や東北方言集でも
とりあげていることから、かつては津軽の広
範囲で使われていた可能性があるとすべきな
のか、結論を出すのは難しいようです。

目次 ↑

津軽にも見られる「わがらねァ」 ↑

「わがる」

東北全体では「わがらねァ」という、一語化
した形容詞としての用法が一般的ですが、一
方で、終止形「わがる」として使われる用法
が、山形・宮城の言語資料に見られました。

米沢・仙台の資料から引用します。

米沢方言辞典(米沢女子短期大学国語研究部 編, 1969年)
わがる[~ga~]動詞(ラ・四)
①理解する
②間に合う。役立つ。
「この紐でもワガル」
③可能だ。できる。
「この位あれば、ワガル」

例文のように、「間に合う・できる」の意味
で、終止形「わがる」が使われています。

目次 ↑

仙台の方言(土井八枝, 1938年 )
「おしごと頼みさまいりした。單物(ひとえ
もの)一枚明日中にわかっかわかんねか、聞
いて來い、つわって參りした」(お仕立物を
頼みに參りました。單物を一枚明日中に出來
るか出來ないかを聞いて來いと言はれて參り
ました)

例文のように「わがっか わがんねァが(出
来るか出来ないか)」、相手に聞く場面で使
われています。

目次 ↑

以上、米沢・仙台の資料から引用しましたが、
この終止形の用法は、山形県・宮城県に限定
されるようです。

目次 ↑

「わがる」 ↑

各地の言語資料より

各地の言語資料より、意味・用例などを整理
しました。

注)言語資料名の( )内は、発行年、著者名

青森(南部地方)
南部のことば(佐藤政五郎, 1982年)
わがない(わがね—わがんね)
〔意味〕
 知らない、駄目だ、いけない、できない
〔例〕
 〇それば、わがんね(それは知らない)
 〇そへば、わがねだ
 (それすれば、駄目なんだ)
 〇おら、そったごと、わがね
 (私はそんなこと、出来ない)
わからね(わがないと同じ)

わがんなー(わがないと同じ)(島守)

わがんにゃえ(わがないと同じ)(下北佐井)

わがんね(わがないと同じ)
※引用欄を二つに分けました。


青森県南 岩手県北 八戸地方 方言辞典(寺井義弘, 1986年)
わがね(句)
〔解説〕
 解る、分る、判るの否定句。

 ①駄目だ(承知しない)。
 ②判らない(明白でない)。
 ③分らない(区別がつかない)。
 ④解らない(理解できない)。
 ⑤嫌だ(欲しない)。
 ⑥いけない(駄目だ)。
 ⑦できない(不可能だ)。
 ⑧見込みがない。
 ⑨あきたらない。
わがねったら(句)
〔意味〕駄目だといったら駄目だ。
    嫌だといったら嫌だ。

わがらね(句)
 ①理解できない。
 ②だめだ。

わがらねったら(句)
〔意味〕拒否の強辞。

わがんね(句)
〔意味〕わがね(前述)の撥音便。

わがんねでァ(句)
〔意味〕でァ(助)は強めの助詞。だめですよ。
※引用欄を二つに分けました。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

青森(下北地方)
下北半島 大利部落の方言(大嶋孜, 1986年)
わがねぇ
〔意味〕だめだ。
〔解説〕
 否定するときに使う。活用は形容詞と同じ
 である。
〔用例〕いぢでぇでおわば わがねぇしてぇ

この資料では、活用は形容詞と同じとしています。

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各地の言語資料より ↑

秋田(全般)
秋田方言(秋田県学務部学務課, 1929年)
わがねぁ(連)
〔意味〕いけない、分らない。
〔用例〕「そんなことするとわがねぁ。」
〔方言採集地〕鹿角郡

わがらねぁ(連)
〔意味〕駄目だ。
〔用例〕「もーわがらなぐなった。」
〔方言採集地〕山本郡、平鹿郡

例文の「わがらなぐなった」のように、打消
の助動詞「ない」の連用形「なく」に、動詞
「なる・なった」が接続する形も見られます。

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語源探求 秋田方言辞典(2001年、中山健)
わからない・わかない〔連語〕
〔意味〕だめだ。いけない。いやだ。役に立たない。

〔ワカラネァ〕 鹿
〔ワガラネァ〕 山 平 由
〔ワガネァ〕鹿 平
〔ワカネァ〕鹿

「ソンタ ゴド スルド、ワガラネァ」
「コノ 箱 小(チー)セァフ(ク)テ ワガネァ」
「ソレバ ワガネァ」

「わかる」の未然形+打消しの助動詞「ない
」の連語であるが、意味上は一語化した形容
詞として用いられる。

この資料では、品詞を「連語」と位置付けて
いますが、意味上は一語化した「形容詞」と
して用いられるとしています。

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各地の言語資料より ↑

秋田(県南)
おらほの言葉 西木村(佐藤ミキ子, 1997年)
ワガラネ 連語
〔意味〕①わからない。
    ②だめだ。なんにもならない。

ワガンネァ 連語
〔意味〕わからない。

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各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(全般)
岩手方言集(小松代融一, 1959年)
 旧南部の部
ワガナェ
〔意味〕だめだ、わからない

ワガネァ
〔意味〕知らない、嫌だ、だめだ、
    いけない、できない、よくない

ワガネァッタ
〔意味〕だめだよ

ワガネェ
〔意味〕だめだ、いけない

ワガラナイ
〔意味〕できない

ワガラネァ
〔意味〕承知できない、不可能だ、いけない

ワガンネァ
〔意味〕だめだ、いけない、わからない

ワガンネァガ
〔意味〕いやだ!

ワガンネァガンサァ
〔意味〕いけない!

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各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(北部)
軽米・ふるさと言葉(軽米町教育委員会, 1987年)
ワガネァ・ワガンネァ
〔意味〕わからない。いけない。だめだ
〔解説〕「分らない。判らない」の変。

ワガナグサ
〔意味〕だめにした
〔例〕車をぶっつけてすっかりワガナグサ。

「ワガナグ+サ(わからなく+した)」のよ
うに、打消の助動詞「ない」の連用形「なく
」に、「する」の連用形「した」が接続する
形も見られます。

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各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(盛岡)
盛岡のことば(佐藤好文, 1981年)
ワガラネァ【わか・らな・い】(連語)
〔意味〕
 駄目である。いやである。いけない。
 ワガンネァ→ワガネァ

ワガネァ
→ワガラネァに同じ。
《補足》
資料上は、「ガ」ではなく、「カ」の右上に
「・」を付して異濁音表記

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各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(中部)
遠野方言誌(伊能嘉矩, 1926年)
ワガラ子ア
〔意味〕出來ナイ

この資料では、「ネ」を「子」と表記し、
「子ア」は「ナイ」の転訛としています。

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おでぇあたっすか-花巻方言の整理と考察-(佐藤善助, 1976年)
ワガネェア・ワガラネェア
〔意味〕わからない、知らない、だめだ、いやだ
〔品詞〕助動詞

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遠野民俗資料 遠野ことば(俵田藤次郎・高橋幸吉, 1982年)
ワガネェー
〔意味〕だめだ、困る、いけない。

ワガンネェー
〔意味〕①判らない ②駄目だ ③いやだ
    ④困る

ワガンマヘン(ワガマヘン)
〔意味〕駄目だ、判らない。
〔例〕
(1) なんぼ頼まれでも、そんたな事ァハー
  、ワガマヘン。あゝワガンマヘン・チャ。
  (駄目だ)

(2) さっきがら探すてるが、さっぱりワガ
  ンマヘン・ナー(判らない)
アッタッタッテ
〔意味〕あったとしても
〔例〕
 そんな良いごとァ前にアッタッタッテ、
 今度ァワガンネェー(駄目だろう)

見出し語の「アッタッタッテ」の用例に、
「ワガンネェー」が使われていました。

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岩手県央部 紫波の言葉(山田長耕, 2007年)
わがなぇ
〔意味〕いけない・駄目
〔用例〕
 百姓ぁ何つくても わがなぇぐなった。
 何すろ手間の安す外国ど競争なんだも。

わがなぇんじぇ
〔意味〕だめですよ

わがばぇ
〔意味〕駄目だろう

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各地の言語資料より ↑

岩手・旧仙台藩(内陸)
黄海村史(黄海村史編纂委員会, 1960年)
わからない
〔意味〕いけない。だめだ。

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胆沢町史9 民俗編2(胆沢町, 1987年)
わがっか
〔意味〕わかるか。理解できるか(会話)

わがねぇ・わがんねぇ・わがらねぇ
〔意味〕わからない。知らない。駄目

わがねぇってがぁ・わがんねぇってがぁ
〔意味〕わからないのか。駄目だってか(会話)

わがねぇわがねぇ
〔意味〕駄目だ駄目だ。だめだめ(会話)

わがんべぇ
〔意味〕わかるだろう(会話)

わがんべぇだらやぁ
〔意味〕わかるでしょう(会話)

わがんめっちゃ
〔意味〕駄目でないか。わかるだろう

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平泉町史 自然編・民俗編1(平泉町史編纂委員会, 1997年)
 平泉の方言(小松代融一)
わがんねぁ
〔解説〕
 わからない。つぎのようにいろいろと
 打ち消しの意味に用いる。

〔例〕
「えもけらえ゜・・・わがんねぁ
 =芋を下さい・・・だめだ」

「あそぴさえってぁ、わがんねぁ
 =遊びに行くのは、許さない」

「これくれぁのかんじょぁ、わがんねぁのが
 =これ位の計算が、不可能(できない)なのか」
《補足》
 例文の「え゜」は、息を鼻から抜きながら
 発音(凡例より)

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各地の言語資料より ↑

岩手・旧仙台藩(沿岸)
気仙ことば(佐藤文治, 1965年)
ワガンネァ(形)
〔解説〕
「解らない」。
病気で助かる見込みのないのもワガンネァ、
頼まれて断わるのもワガンネァ、困ったこと
にもワガンネァ、試験問題の解らないのは勿
論ワガンネァ、恥ずかしい時にも「おらワガ
ンネァ」、言うことをきかない子供も「ワガ
ンネァわらし」

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気仙方言辞典(金野菊三郎, 1978年)
わがんねァ「句」「形」
①理解出来ない。
〔例〕この本がわがんねァ。

②いけない。
〔例〕それェそごさ置いでァわがんねァ。

③だめだ。
〔例〕病人はどうしてもわがんねァようだ。

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各地の言語資料より ↑

山形(全般)
山形県方言辞典(山形県方言研究会, 1970年)
ワがラネ(連語)
①わからない。不明。
〔例〕「すいぶん捜したが——け」

〔分布地点〕
 山形市。東村山郡干布。北村山郡宮沢・
 楯岡。最上郡。酒田市。東田川郡大泉。
 飽海郡平田。

②だめだ、役に立たぬの意。
〔例〕
 「そんなもの買っても——」
 「あいつでは——」

〔分布地点〕
 東置賜郡上郷。山形市。東村山郡干布・
 楯山。北村山郡宮沢・楯岡。最上郡小国
 。西田川郡鼠関。
ワがンネ(連語)
〔意味〕わからない。不可能。だめだの意。
「もー —— ハー(助からないよの意)」。

〔分布地点〕
 米沢市。東置賜郡上郷。西田川郡白鷹
 ・長井周辺。南置賜郡南原・中津川。
 山形市周辺。西村山郡寒河江。南村山郡。
 北村山郡楯岡。最上郡。
※引用欄を二つに分けました。


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各地の言語資料より ↑

山形(庄内地方)
庄内方言辞典(佐藤雪雄, 1992年)
ワガラネ

①わからない。
②だめだ。なんにもならない。
「あれではワガラネ」
(あれではだめだ・あの者では何の役にも
 たたない)。
〔調査地〕湯野浜・温海・鼠ヶ関

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各地の言語資料より ↑

山形(最上地方)
真室川の方言・民俗・子供の遊び(矢口中三, 1978年)
ワガラナァェ
①理解できない。
②見付けられない。
③だめな(=だ)。——野郎だ。

ワガンナァェ
〔意味〕「ワガラナァェ」と同
〔例〕ドサアッカ(どこにあるか)——。

この資料では、「ない」を「ナァェ」と表記
しています。当方が呼称として用いる「え・
あ中間音」です。

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各地の言語資料より ↑

山形(置賜地方)
白鷹方言 ぼんがら(奥村幸雄, 1961年)
わがんね
〔意味〕分らない、駄目だ

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米沢方言辞典(米沢女子短期大学国語研究部 編, 1969年)
わがんなえ[~ga~e]連語
〔意味〕できない。「わがる」の否定語。

わがんね[~ga~]連語
〔意味〕わからない。できない。いけない。
    駄目だ。「わからない」の転。

わかんめっちゃあ 連語
 ①駄目なことだよ。
 ②間に合わないよ。
 ③出来ないよ。

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各地の言語資料より ↑

宮城(仙台)
仙台の方言(土井八枝, 1938年 )
わからない(ワガンネ) 句
〔意味〕
 1.いけない、駄目だ。
 2.出來ない。

〔例〕
1、
わかんねわかんね、あんたそった無茶
 すっからわかんねおね」
(いけないいけない、お前はそんな無茶を
 するから駄目だよ)

2、
「おしごと頼みさまいりした。單物(ひとえ
 もの)一枚明日中にわかっかわかんねか、
 聞いて來い、つわって參りした」
(お仕立物を頼みに參りました。單物を一枚
 明日中に出來るか出來ないかを聞いて來い
 と言はれて參りました)

〔註〕
「了解する」の意には多くわけわかる
 、わけわからないといふ。
《補足》
見出し語の横のカタカナ表記は、資料上は
フリガナとして表示

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各地の言語資料より ↑

宮城(三陸圏)
石の巻弁 語彙編(弁天丸孝, 1932年)
わがんねぁ
〔意味〕出来ない、いけない、駄目
    等に使ふ。
〔例〕
「そえずわ他(ほか)貸てわがんねぁぞ」
「俺にはとってもわがんねぁ」


わがりえん、わがりえんと
〔意味〕いけない、いけませんよ。
〔例〕「あどがら行ったてわがりえんと」

文字通り「わからない」とも使ふのです。

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各地の言語資料より ↑

宮城(県南)
白石市史3の(3) 特別史(下)の2(白石市史編さん委員会, 1987年)  宮城県白石地方の方言と訛語(菅野新一)
わがんねー(わかんない)

(1) いけない・駄目だ。
「えってわがんねー(行ってはいけない・
 行っては駄目だ)」
「えずまでも、あすんででは(遊んでいて
 は)わがんねー」

(2) できない。
「この仕事ば今月の二十日までに仕上げで
 もらえでーが、わがっか(できるか)、
 わがんねーが(できないか)、なるべぐ
 早ぐ知らしェでけろ」

標準語の意味(分からない)にも使う。

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各地の言語資料より ↑

福島(全般)
福島県方言辞典(児玉卯一郎, 1935年)
ワカラナイ【句】
〔意味〕役に立たない、駄目だ
〔例〕
「わからないやつだ」(役に立たない人だ)
〔使用地域〕会津・県南・浜通


ワガンネェー【句】
〔意味〕わからない、出来ない
〔例〕
「算術などわがんね」(算術など出来ません)
〔使用地域〕県北・中部・県南
《補足》
*「句」:語の連なったもの(凡例より)
*県北・中部・県南=中通り北部・中部・南部

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各地の言語資料より ↑

福島(会津地方)
会津方言辞典(龍川清・佐藤忠彦, 1983年)
わからない わからなえ【句】
〔意味〕役に立たない、駄目な
〔用例〕「——やつだ」

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各地の言語資料より ↑

福島・中通り北部(信夫地方)
福島方言集(香内佐一郎, 1953年)
ワカンネ
〔意味〕駄目

ワカンネェ
〔意味〕役に立たない

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各地の言語資料より ↑

福島・浜通り北部(相馬地方)
福島県中村町方言集(武藤要, 1931年)
わかんねぇ
〔意味〕いけない、駄目だ
〔用例〕「そおだごとして、わかんねェ」。

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相馬方言考(新妻三男, 1930年)
ワカンネェー(形) わかるの打消。

一、
はっきり了解出来ない、解し兼ねる、
合点が行かない、不明である。(本義)

〔例〕
・来っか来ねぇーかワカンネェー。
・算術一つ、一時間もかかってまだワカンネェー。
・この文章の中で何かワカンネェーことなえか。


二、
いけない、駄目だ、役に立たない。
(転義、多く使用)

〔例〕
・この蜜柑すっぱくてワカンネー。
・鮎釣んには竿まっと長くなくてぇーワカンネー。
・重たくてワカンネェー。
(重い荷を擔がうとして擔ぎかねた場合など。)
・あすなさ、五時に起きなくてぇワカンネェー。
《補足》
擔がう(かつごう)、擔ぎ(かつぎ)

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高平方言集(高平方言教室, 2005年)
ワガンネ
①【わからない】
 なんぼ言ってもワガンネ人だ

②【だめだ】
 この洗濯機はワガンネ

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各地の言語資料より ↑

福島・浜通り南部(いわき地方)
いわき方言(高木稲水, 1975年)
わがんねえ(句)
〔意味〕駄目だ。

富岡町史 第三巻 民俗 考古編(富岡町史編纂委員会, 1987年)
ワガンネエ
〔意味〕わからない・できない

いわき市小川町地方の方言(草野二郎, 1988年)
わがんねえ
〔意味〕分らない、駄目な、はっきりしない。
〔用例〕
 あえづはどうもわがんねえやづだなあ、
 どうがしてんだっぺ。

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各地の言語資料より ↑

編集後記

かつての日高見国である奥州東北の言語を未
来へ継承していくためには、公用語化が不可
欠です。

当方の提唱する文法・表記法は国語の東北版
(標準東北語)として、東北各地の言語資料
を基に、東北の広範囲に共通の用法で構成さ
れており、文章語として公文書や記事などに
使うことを想定しています。

尚且つ、東北全土の言語に対応しているため
、東北各地の言語の地域公用語化にも貢献で
きるはずです。

当方では、標準東北語を、中国における北京
官話(普通語)に相当するものと位置付けて
いますが、「方言」から公用語化への脱却こ
そが、明治以降、自らの言語を否定され、劣
等感を植え付けられた東北の力を引き出す原
動力となるはずです。

編集者:千葉光

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