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5/17/2026

【過去完了形】④:秋田方言辞典編

ここでとりあげる資料は、用法編とは別にし
て整理しました。

【過去完了形】①:用法編(たった・てあった)

編集者:千葉光

秋田方言辞典編
次の資料では、「てあった・たった」につい
て、語形・分布・用例・語の成り立ちなどを
詳細にとりあげています。


語源探求 秋田方言辞典(中山健, 2001年)
てあった・たった〔助動詞〕

【解説】
動詞・同型助動詞の連用形に付いて完了態の
過去(過去完了。大過去)を表す。詠嘆的な
回想の気持ちを表す。

〔テアッタ〕鹿 北 山 南 市 河 仙 由
〔テアタ〕山 南
〔テァッタ〕市
〔テァタ〕市 河
〔タッタ〕北 山 市
〔タタ〕河 仙

【用例】
「アノ 時 アイヅモ 来テアッタナ」
「次ノ 朝マ 起ギダバ、飯(ママ)ノ 仕度 シテアッタド」
「アノ 映画 去年 見デァッタ
「昔、昔、アル オ寺サ 和尚(オッ)サンド
 三人ノ 小僧 居デアッタド」
「急イデ 行ッタキャ、オ爺サン 鉢巻シテ
 赤ァ 顔 シテ 寝デアッタド」
「マグレルエニ シテ(ころがるようにして)
 馳シェデ 行ッタッタ
「アノ 山ノ 所ニ 吾作テ 若ァ者 居ダッタオノ」

【全国的分布】日本方言大辞典
《たった》
青森三戸郡 岩手 宮城宮城郡 群馬勢多郡
埼玉秩父郡 千葉安房郡・夷隅郡 東京都利島
神奈川愛甲郡 新潟岩船郡・西蒲原郡 山梨南巨摩郡
岐阜揖斐郡 静岡富士郡 三重度会郡・北牟婁郡
滋賀高島郡 大阪市 兵庫神崎郡・明石郡
奈良吉野郡 和歌山新宮市 島根 長崎 大分南海部郡

《たた》
青森南津軽郡 三重志摩郡 鹿児島市

【語源考察】
以上のように全国的にはタッタの形であるが
、本県では、タッタ・タタも時に用いるが、
多く原形のテアッタを用いる。

テアッタ、テアッタのような無声母音に
続くときや、行ッテアッタのような促音便に
続くときは〔テ〕、漕イデアッタ、死ンデア
ッタ、飛ンデアッタ、住ンデアッタのように
、ガ・ナ・バ・マ行五段の音便形に続くとき
は〔デ〕(本濁音・鼻濁音)、その他の場
合は居デアッタ・寝デアッタなどのように
〔デ〕(中濁音・単なる濁音化)となる。

接続助詞「て」+補助動詞「ある」の音便形
「あっ」+過去の助動詞「た」の一語化した
ものであるが、「て」には本来の、完了の助
動詞「つ」の連用形としての意味があると思
われる。

〔注〕
南秋田郡・山本郡に「行ったのだ」の意の「
行ッタッタ」(「行ッタアツダ」の転)が
あるが、「行ッテアッタ」の転の「行ッタッ
タ」と混同しないように注意を要する。

【補足】
この資料では、「てあった・たった」につい
て、完了態の過去(過去完了・大過去)を表
し、詠嘆的な回想の気持ちを表すとしていま
す。

秋田における分布については、「テアッタ」
が北部の鹿角郡、北秋田郡(大館市など)、
山本郡(能代市など)、中心都市の秋田市、
南秋田郡、河辺郡、仙北郡、南部の由利郡
(本荘市など)と幅広く分布しています。

また、「テアッタ」と「タッタ」の中間形と
思われる「テアタ・テァッタ・テァタ」も見
られます。

一方、「タッタ・タタ」は、北秋田郡、山本
郡、秋田市、河辺郡、仙北郡に分布していま
す。

これを基にすると、「テアッタ形・タッタ形
」の併用地域は、北秋田郡、山本郡、秋田市
、河辺郡、仙北郡となります。

解説にあるとおり、秋田全体では原形である
「テアッタ形」が多く用いられる傾向にある
ようです。

「テアッタ・タッタ」は日本語(全国共通語
)には存在しない用法ですが、日本方言大辞
典によれば、「タッタ」が関東・新潟・山梨
・静岡・三重・関西・島根・長崎・大分に分
布し、「タタ」が青森(津軽)・三重・鹿児
島に分布しています。

語源考察では、「てあった・たった」につい
て、接続助詞「て」+補助動詞「ある」の音
便形「あっ」+過去の助動詞「た」の一語化
したものとしています。

また、接続時の「テ」の濁音化についても詳
細に解説しています。

濁音化しない条件については、無声母音・促
音便「ッ」に続くときとしています。

無声母音とは、子音に続く母音が息の音のみ
で発音される現象です(口形は母音のままの
ため、聞き分けできる)。「来テアッタ・シ
テアッタ」の「来・シ」が該当します。

濁音化する条件については、ガ・ナ・バ・マ
行五段(例:漕グ・死ヌ・飛ブ・住ム)の音
便形に続くときは本濁音化・鼻濁音化し、そ
れ以外の音便形(例:居ル・寝ル)に続くと
きは中濁音化(単なる濁音化)するとしてい
ます。


編集者:千葉光

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