て整理しました。
【過去完了形】①:用法編(たった・てあった)
編集者:千葉光
青森県編
次の資料では、過去完了形について、助動詞・形容詞・形容動詞ごとにとりあげています。
※引用欄を二つに分けてあります。
みちのく双書第二十一集 青森県の方言(此島正年, 1966年)
5、助動詞
行ッタッタというような言い方のあるのも、
方言のタがなお完了の意を強く持っている現
れである。
すなわち、タッタは西洋文法で言う過去完了
に相当する形で、完了のタに過去のタがつい
たものと言うことができる。
青森県ではこのタッタは南部弁に主として用
いられるようで、行ッタが単純な完了ないし
過去を表わすだけなのに対して、行ッタッタ
と言うと、「もうとっくに行った・すでに行
っている」という強めや、あるいは「行った
ことがある」という経験を表わすのである。
津軽では、行ッテアッタというようにタを本
来のテアルに戻して言うことが多いようであ
る。(「寒かった・静かだった」を寒クテア
ッタ・静カデアッタと表現するのと関連)。
3、用言
形容詞について。
(中略)
かくて、方言の形容詞では終止形を基本とし
て活用が単純化されるが、なお注意してよい
のは、いわゆるカリ活用の「赤かろ(う)・
赤かっ(た)」という形が津軽では発達しな
いでしまって、「赤かった」はアケェクテア
ッタのように、「―クテアッタ」(→クタッ
タ)の形を用い、「赤かろう」はアケェベで
済むからもともと「―かろ」のような形は必
要としないのである。
クテアッタなどという言い方は長たらしくて
不便なような感じがするが、実は便利なこと
もあって、たとえばアカクテアリマシタのよ
うにすぐにマスを入れて丁寧表現にすること
ができるが、共通語式の「赤かった」では、
丁寧表現にするばあいに「ます」が入れられ
ず、少し旧式に「赤うございました」と言う
か、あるいは「赤かったです」というぎこち
ない言い方をしなければならない。
「赤いです」という現在形をそのまま過去形
にして「赤いでした」と言えればよいのだが
、これはまだこなれていない(最近はこれが
かなり聞かれるようになっては来たが)。
このばあいに津軽式に「赤くてありました」
と言えば簡単におさまるのである。
こどもは正直なもので、津軽の低学年の子の
作文を見ると、「おなかがずきんずきんいた
くてありました」「そのくすりはにがくてあ
りました」のような表現をどしどししている。
もっとも、中に「たいへんおもしろかったで
した」「だいこんのつけものがいちばんおい
しかったでした」のような言い方が交ってい
るのは、こどもなりの方言と共通語との対応
意識からオモシロクテアッタを「おもしろか
った」と訳し、それに「でした」を加えたの
であって、共通語に完全な言い方がないため
の苦肉の策なのである。
形容動詞について。
(中略)
なお、共通語では「静かだろ(う)・静かだ
っ(た)」という形が活用の中に入れられる
が、方言では、「静かだろう」に当る表現は
シジカダベ(終止形プラス「べ」)と言うか
ら特にこの形をとりあげる必要はない。
「静かだった」は南部では同様に用いられる
が、津軽ではシジカデアッタというふうに本
来のシジカデにアルをつける形で言うから、
シジカダッ(タ)という形を立てる必要がな
い。ちょうど形容詞のばあいにサムカッタが
なくてサムクテアッタと言うのと同じである。
【補足】
この資料では、「行ッタッタ」の「タッタ」
について、西洋文法の過去完了に相当する形
であり、「もうとっくに行った」という強め
や、「行ったことがある」という経験を表わ
す用法としています。
尚、「タッタ」は南部弁に主に用いられ、津
軽では「行ッテアッタ」というように、本来
の「テアル」に戻して言うことが多いようで
す。
形容詞の解説では、津軽の「クテアッタ」の
用法であれば、「アカクテアリマシタ」のよ
うに丁寧表現への移行が容易であるのに対し
、共通語式のばあい、「赤かったです」とい
うぎこちない言い方をしなければならないこ
とを指摘しています。
編集者:千葉光