て整理しました。
【過去完了形】①:用法編(たった・てあった)
編集者:千葉光
仙台市・東北大学編
次の資料では、東北大学大学院が仙台市の話者を対象に行なった調査を基に、過去完了形
(経験)について、文法カテゴリー(テンス
・アスペクト)に基づき、体系的に記述して
います。
※引用欄を二つに分けてあります。
宮城県仙台市方言の研究(小林隆, 2000年)
4.3 仙台市方言におけるテンス・アスペクトの形式的特徴
4.3.1 形式の種類と動詞への接続
仙台市方言におけるテンスに関わる形式に
は、―タ、―タッタ、アスペクトに関わる形
式には、―テル(―テタ、―テタッタ)がある。
本章は、ル形(終止形)、タ形、タッタ形、テ
ル形、テタ形、テタッタ形を主に扱うことと
し、テンスに深く関わる―ケについては場合
によって触れる程度にとどめる。
当該方言におけるテンス・アスペクト形式が
動詞に接続した形を、動詞の活用ごとに例示
すると下の表のようになる。
表 4-1 仙台市におけるテンス・アスペクト形式
運動動詞:書く 食う 起きる する
①ル形
カグ クー オギル スル
②タ形
カイダ クッタ オギダ シタ
③タッタ形
カイダッタ クッタッタ オギダッタ シタッタ
④テル形
カイデル クッテル オギデル シテル
⑤テタ形
カイデダ クッテダ オギデダ シテダ
⑥テタッタ形
カイデダッタ クッテダッタ オギデダッタ シテダッタ
状態動詞(存在):居る 有る
①ル形 :イル アル
②タ形 :イダ アッタ
③タッタ形 :イダッタ アタッタ
④テル形 :― ―
⑤テタ形 :― ―
⑥テタッタ形:― ―
(中略)
共通語にない特徴的な形式としては、③タッ
タ形は動詞にタッタが付いたもの、⑥も同様
に動詞+テにタッタが付いたものがある。
⑤テタ、⑥テタッタなどのテに連なるタは濁
音化し、シテダ、シテダッタとなることがあ
る。
4.5 伝統的方言のテンス・アスペクト体系--- 引用ここまで ---
4.5.1 運動動詞の完成的場面
最初に、1998年調査の結果を主な考察対象
として伝統的方言の体系の記述を行う。
(中略)
以下、話者を生年(元号による)と性別によっ
て〔大11男〕、〔大14男〕などと示すことが
ある。
運動動詞の未来における完成的場面にはル形
、過去ではタ形とタッタ形が用いられる。
(1)今度ノ 日曜日、従兄弟ガ 東京カラ 来ル
(完成相・未来)〔大14男〕
(2)昨日、従兄弟ガ 二年振リニ 遊ビサ 来タ/来タッタ。
(完成相・過去)〔大14男〕
次の(3)(4)は、(3)今日、(4)先週、という時
間表現によって(3)よりも(4)がより昔の出来
事を表現しているのだが、タ形とタッタ形を
入れ替えても同じように使用できる。
そのため、タ形とタッタ形には時間副詞との
共起において差はなく、過去の出来事を表す
という機能においては同様であるため、過去
の完成的場面では違いを明確に説明できない
といってよいだろう。
(3)今日 マタ 新聞ノ勧誘 来タ/来タッタ ワ。〔大14男〕
(4)((3)の発話直後、「またって、前はいつ?」と聞かれて)
先週 来タッタ/来タ。〔大14男〕
次の(5)(6)は、同一時の過去の出来事(午後
一時頃に昼飯を食べた)についての表現だが
、出来事の結果の残存を含んで表現する場合
にはタ形しか用いられないという違いがみら
れる。
(5)(お昼ご飯は何がいいかと聞かれて)
昼飯 モー 食ッタ ワ。〔大11男〕
(6)((5)の発話直後「何時頃?」と時刻を聞かれて)
一時頃に 食ッタッタ/食ッタワ。〔大11男〕
(5)はパーフェクト的な場面であり、(6)は完
成的な場面である。タ形は(5)(6)の両方で用
いることができるが、タッタ形は、現在パー
フェクト的場面(5)には用いられない。
タ形もタッタ形も過去の出来事の完成的な場
面では用いられるが、タッタ形はタ形が用い
られる現在パーフェクト的場面では用いられ
ないため、完成相過去専用形式とすることが
できる。
タ形を用いるよりもタッタ形を用いるほうが
、出来事と現在との切り離し、つまり断絶性
が明確に表され、(6)ではタ形もタッタ形も
現在と切り離された過去(完成的過去場面)の
出来事の表現にも用いられるが、タッタ形を
用いた場合には、記憶の検索によって確かめ
られた過去の出来事であるという意味がより
明確になる。
【補足①】
「4.3.1 形式の種類と動詞への接続」では、
テンス・アスペクト形式が動詞に接続した形
を、動詞の活用ごとに例示しています。
資料では運動動詞が7つ例示してありますが
、そのうち4つの語をここでは引用しました。
③タッタ形に「書いだった・食った・起ぎだ
った・したった」などが、⑥テタッタ形に「
書・食ッテダッタ・起ギダッタ・シテダッタ
」などが例示されています。
状態動詞(存在)では、③タッタ形に「イダ
ッタ・アッタッタ」が例示されています。
そして、「タッタ形・テタッタ形」について
、共通語にない特徴的な形式としています。
【補足②】
「4.5.1 運動動詞の完成的場面」では、1998
年に大正11年・14年生まれの男性話者に面接
調査を行った結果を基に、仙台市方言のテン
ス・アスペクト体系について記述しています。
タ形・タッタ形の両形が使用できる場面では
、タッタ形を用いた場合、「記憶の検索によ
って確かめられた過去の出来事であるという
意味がより明確になる。」としています。
編集者:千葉光