奥州/東北各地の言語資料を基に、
意味・発音・語源・活用などを整理しました。
目次:
・意味・「か」が濁音化しない
・語源
- 語源① 聞(利)かぬ気
- 語源② 聞かない(の形容詞化)
・活用
・各地の言語資料より
- 青森(津軽)
- 秋田
- 秋田(由利)
- 岩手
- 山形(全般)
- 山形(庄内)
- 山形(最上)
- 山形(村山)
- 山形(置賜)
- 宮城(全般)
- 宮城(仙台ほか)
- 福島(全般)
- 福島(会津)
- 福島(浜通り北部)
- 福島(浜通り南部)
- 福島(中通り中部)
- 福島(中通り南部)
・編集後記
意味
「きかね」の意味を、奥州/東北6県の言語資料を基に整理しました。
気が強いなどが、あげられます。
気が荒い
気性がはげしい
勝ち気
負けん気
手ごわい
強情な
乱暴な
従順でない
不従順な
うんと云わないこと
なかなか人の言葉に従わない
頑固である
単に「人の言う事を聞かない」
ということでなく、
「気が強い、荒い、勝ち気な、従順でない」
などの意味があります。
また、形容詞であることにも注意を要します。
「聞かない、効かない、利かない」は、
動詞「きく」の未然形に、
打消の助動詞「ない」が付いた形ですが、
奥州語の「きかね」は形容詞です。
各地の方言資料でも
概ね形容詞と位置付けています。
「きかね」を形容詞とする主な方言資料:
()内は、発行年、著者
津軽木造新田地方の方言(2000年、田中茂)
秋田方言(1929年、秋田県学務部学務課)
語源探求 秋田方言辞典(2001年、中山健)
気仙ことば(1965年、佐藤文治)
庄内方言辞典(1992年、佐藤雪雄)
仙台方言集(1919年、土井八枝)
細倉の言葉(1956年、世古正昭)
福島県方言辞典(1935年、児玉卯一郎)
「か」が濁音化しない
奥州語には、2音目以降の「か、た」行が
濁音化する発音法則があり、
これは奥州/東北6県に共通します。
例:
聴かない → きがね
聞く → きぐ
秋田 → あぎだ
福島 → ふぐしま
これに対し、
奥州語の「きかね」は、
「か」が濁音化しないことが特徴です。
実際に、
奥州/東北6県の方言資料を
調べたところ、
41冊のうち36冊は
清音のみで表記されていました。
41冊(6県の内訳):
青森:5冊
秋田:8冊
岩手:4冊
山形:6冊
宮城:6冊
福島:12冊
41冊のうち、残りの3冊については、
・一部の地域で濁音化の例有り:でした。
- 語源探求 秋田方言辞典
- 庄内方言辞典
・濁音のみで表記:
- 一九七三年版 象潟町史
「津軽木造新田地方の方言」では
語中の「カ」が濁音化していないことに
言及しています。
津軽木造新田地方の方言(2000年、田中茂)
キカネ
意味:気が強い・気が荒い
原形:きかない
品詞:形容詞
活用:
未然「キカネベ」
連用「キカネグなる」「キカネシテあった」
終止「キカネ」
連体「キカネ時」
仮定「キカネば」
音韻:
語中の「カ」が濁音化していない。
どうしてだろう。
「キカナイ」を原形と考えると
「ナイ」が「ネ」に転化している。
「nai」と母音の連続が「ne」と転化する例である。
「キ」は母音が「イ」と「ウ」の間の母音をもって発音される。
用例:
キカネ人バリ アヅバテラデバ。
(気の強い人ばかり集まっているね)
「きかね」が濁音化しないのは、
「聞がね、効がね、利がね」と区別するために
自然発生的にそうなったものではないかと
推測することもできます。
現に、秋田の方言資料2冊では、
奥州語の「きかね」を清音で、
「聞かない、効かない、利かない」を
「きがね」と濁音で区別しています。
読む方言辞典 秋田県 能代・山本編(1995年、工藤泰二)
きかねぇ〈動+助動〉
意味:
人に負けたり言いなりになるのを嫌う性質。
勝ち気。強がり。
*気が強く活発なこと。
「キカネおなごだ」(気の強い女だ)。
きかねぇふり
意味:強がり。
例:「ふとこえばキカネふりして」
「人が来ると強そうな素振りをして)。
きがね〈動+助動〉
①及ばない。「それ以上に」「より多く」の意。
「五十人でキがネふとあじばたで」
(五十人よりもっと多くの人が集まったよ)。
②効き目がない。「この薬さっぱりキガネ」。
③聞き入れない。
「ひとのいうことちっともキがネ」。
おらほの言葉 西木村(1997年、佐藤ミキ子)
キカネ
意味:きかん坊。腕白。
キガネァ
意味:聞かない。聞いていない。
これらの方言資料からも
清音、濁音で意味合いが区別されて
使われていることが窺えます。
語源
語源について、各地の方言資料では①聞(利)かぬ気と、ありますが、
・津軽弁の世界〔完〕(2001年、小笠原功)
・遠野方言誌(1926年、伊能嘉矩)
・細倉の言葉(1956年、世古正昭)
②聞かない(の形容詞化)
・語源探求 秋田方言辞典(2001年、中山健)
・気仙ことば(1965年、佐藤文治)
・会津ことば散歩(1979年、江川義治)
両者は、ほぼ同一と見て差し支えないと思われます。
①②ごとに、方言資料を整理します。
語源① 聞(利)かぬ気
津軽弁の世界〔完〕(2001年、小笠原功)きかね
意味:勝ち気な。
例:「暴える(あばれる)馬(ま)ど、
きかね女(おなご)さだきゃ(には)手ば出しなて、
昔がら喋らえでるだね(のだよ)。
蹴とばさえで(されて)、踏まえで、
殺さえで終(しま)るだて(だって)。」
きかない。
「き(聞・聴)かない」の「きく」は、
この場合は、
相手の言葉や意見を受け入れる、
承知するという意で用いられている。
「ない」は、古くは「ず」という
打消しの助動詞であったが、
中世、関東方言として
形容詞的な「ない」という表現が現われ、
明治期、小学読本から
共通語として定着した語である。
津軽弁の「きかね」は、
「聞かぬ気(だ)」
「聞(利)かん気」と同義の語で、
他人の話や意見を耳や心に入れず、
人に譲ったり負けたりすることを
激しく嫌うような、
勝ち気、意地っ張りな性格を表わす
形容動詞として用いられている。
また、「きかね」に、
サ変動詞の連用形の「し」
(津軽弁では「へ」と訛る)を挿入して
強調して「きがへね」とも表現されている。
「これを聞きて、ましてかぐや姫きくべくもあらず(竹取物語)」
「さあ、きかぬ気の凄傾城(眉斧目録)」。
遠野方言誌(1926年、伊能嘉矩)
キカナイ(キカナイ、ガギ)
キカナクナル
意味:
アバレ(アバレ児)アバレル
キカヌキの轉
細倉の言葉(1956年、世古正昭)
きかない(形)(nɛː )
意味:
気ノ強イ、横着ナ、勝気ナ。
言ウコトヲ キカナイから出たのではなく、
寧ろ所謂「利カヌ気」であろう。
例:
「キカネェ子ダコト」
(何と横着な子だろう)
語源② 聞かない(の形容詞化)
語源探求 秋田方言辞典(2001年、中山健)きかない〔形〕
意味:勝ち気だ。負けん気だ。荒っぽい。乱暴だ。腕白だ。
キカネァ:
鹿角郡、北秋田郡、山本郡、南秋田郡、秋田市
河辺郡、仙北郡、平鹿郡、雄勝郡、由利郡
キガネァ:仙北郡、由利郡
キカネ:山本郡、南秋田郡
キカナイ:南秋田郡
例:
「ホントニ キカネァ ワラシンダ」
「キガネアンバガリンデ ナンモ 分ガラネァナンダ」
「アンマリ キカネァグ スルナ」
〔語源考察〕
聞かない〔連語〕(「聞かぬ」とも)
〈きく〔聞〕〔他カ五(四)〕の未然形に
打消しの助動詞「ない」
または「ぬ」の付いたもの〉
なかなか人の言葉に従わない。
がんこである。
*浮世草紙・浮世栄花一代男-四・三
「此ちぎりいつまても
かはるなかはらじと思ひしに、
家中に聞(きか)ぬ男ありて
其御いたはりあそばしける」
*改正増補和英語林集成
「ナカナカ キカナイ ジョジョウフダ〈『日国』〉」
この「聞かない」の形容詞化したもの。
必ずしも悪い意味で言うのでなく、
「アノ子ァ ナガナガ キカネァ ドゴ アル」などと、
「みだりに人の言いなりにはならず、
自主的で見どころがある」の意で
いうこともある。
〔注〕打消しの助動詞(2)
ない〔助動〕活用語の未然形に付き、
打消しの意を表す。
近世では稀に
「あらない」があるが、
現代語では「ある」には付かない。
サ変には「し」に付く。
基本形:ない
未然:なかろ
連用:なく、なかっ
終止:ない
連体:ない
仮定:なけれ
活用の型:形容詞型
「ない」は文献上、
室町末期から関東方言として現れる。
活用形の完成した近世後期でも、
打消しは「ない」より
「ぬ」が一般的であるが、
明治以後、国定の読本をはじめ
口語文の標準としては
「ない」に代わられるに至った。
(『日本国語大辞典』〈補注〉参照)
気仙ことば(1965年、佐藤文治)
キカネァ(形)
「聞かない」か。
けんかに強い者、
議論で相手に譲らない者、
荒っぽい遊びをする子供、
これらはすべてキカネァ人、
キカネァ子供。
人の助言や注意を聞こうともしない、
ということからこう言う。
会津ことば散歩(1979年、江川義治)
きかねい
「あいつは ふんとに きかねい」というコトバをよく聞く。
~中略~
「きかない」は、
心が強い、意地・根性があるというよりは、
むしろ強情張りの人間で、
あくまで自己の主義主張を無理にも通す、
そういう人をいう。
例えてみれば、
青森地方の方言で「じょっぱり」、
熊本地方の「もっこす」に
似たコトバではなかろうか。
正直にいえば、会津人は、
かたくなに意地を張るところがある。
正しい筋はあくまでも通すことは良いことだが、
片意地にわかり切ったことを
、 体面上からがむしゃらに
無理やり主張する面もないではない。
このような強情を張ることが、
会津地方で「きかねい」というのだが、
その語源は、
他人の言うことを意に介せず、
全く聞き入れない、
つまり聞かないことか、
あるいはまた、
他人がいう意見、
その教えなどを
いくら言っても効(利)かない、
という意味のいずれかであろう。
語源については、
①②のどちらかが正しいということでなく、
「利かぬ気」と「聞かない」が
複合的に形容詞化したものと
捉えた方がよいかもしれません。
活用
各地の方言資料を基に、形容詞としての活用を整理しました。
活用:
※「え・あ中間音」を変体仮名で表記しています。
(奥州語の表記法を、ご参照ください。)
活用については、
・津軽木造新田地方の方言を、主に参照しました。
・語源探求 秋田方言辞典
各地の言語資料より
各地の言語資料より、意味・用例などを整理しました。
注)言語資料名の( )内は、発行年、著者名
青森(津軽)
津軽 森田村方言集(1979年、木村国史郎)キカネェ
意味:
利かん気。気性がはげしい。
性格が荒っぽい。
ジョッパリ(強情張り)とも共通している。
津軽弁死語辞典(2000年、泉谷栄)
キカネ
意味:気性が激しい。
津軽の標準語(2007年、久米田いさお)
キカネ
意味:気性の激しい・気荒い・利かない
例:キヨダキャ、タンダ、キカネ、モンデネヤ、クツデ、マルダ
清はね、只の、気荒い、もんじゃあないよ、噛んで、しまうんだ
キカネワラシ
意味:利かん坊
例:キヨァ、キカネワラシデ、オキテランドサモ、カガテエグ
清は、利かん坊で、年上の連中にも、向かっていく
秋田
秋田方言(1929年、秋田県学務部学務課)きかねぁ(形)
意味:荒い。つよい。
例:「あの小供ほんとうにきかねぁ。」
方言採集地:山本郡、雄勝郡
男鹿寒風山麓方言民俗誌(1971年、吉田三郎)
きかね
意味:
人のいうことを聞かぬというのでなく、
ここでは強いということである。
例:
「なんとあの子は、きかねくて、
おいの子など、毎日ながひらいでばしいるでぁ。」
きかんぼ
意味:
聾をもいうが、ここでは主として、
人のいうことを受入れない
わからずやの事をいう。
例:
「おいのいのがぎ、ほんとにきかんぼで困るでば。」
「あの男いいとしして案外きかんぼだでば。」
二ツ井町史(1977年、二ツ井町町史編さん委員会)
キカネェ
意味:
強いこと、また根性悪く強い者に
憎み蔑しみの意をこめて言う場合もある。
例:
たまげた キカネェ 嫁ダ。
キカネェフリは強さを誇示する。強がり。
キカンボ
意味:あばれんぼ。
男鹿の方言集(1993年、佐藤尚太郎)
キカネ
意味:強い。気性が荒い。
手ごわい。丈夫だ。
生意気盛りで仲々に人の言うことも
聞かない子供というニュアンスもある。
秋田(由利)
一九七三年版 象潟町史(1973年、象潟町郷土史編纂委員会)きがねえ
意味:強い、荒い
岩手
岩手方言集(1959年、小松代融一)キカナイ
意味:元気なこと
キカナェ
意味:強い、乱暴である
キカネァ
意味:強い、乱暴である、利かぬ気の
キカンコ
意味:いたずら者、乱棒者
キカンボ、キカンポ、キカンボー
意味:いたずら者、乱棒者、気の荒い子、腕白小僧
盛岡のことば(1981年、佐藤好文)
キカネァ
①なかなか人のことばに従わない。
がんこであること。勝ち気なこと。
意地っぱりなこと。
②乱暴であること。
キカナ-グナ・ル
①きかん気になる。強情をはる。
②荒びる。乱暴する。
岩手西和賀の方言(1982年、高橋春時)
きかにぇ
①強い。
〝あのわらしあ きかにぇ〟
あの子供は強い。
②聞かない。
〝その話だば きかにぇがった〟
その話なら聞かなかった。
③効かない。
〝此の花は千円で きかにぇ〟
此の花は千円よりも高い。千円では足りない。
山形(全般)
山形県方言辞典(1970年、山形県方言研究会)キカナエ、キカネ
②(子供の)腕白な。乱暴な。
例:「キカナクテ困る」
分布地点:村山、最上
山形(庄内)
庄内方言集 おらが庄内弁(1984年、佐藤俊男)きかね
意味:わんぱく。乱暴。
〔子供らが外で遊んでいるような場合、
時々誰それが〝きかね〟、とうったえる声、
または叫び声を聞くことがある。
これは、誰それが自分をいじめるという意味である。
あの子〝きかね〟ぐで困ったもんだ〕
庄内方言辞典(1992年、佐藤雪雄)
キカネ(形容詞)。
意味:利かない。利かぬ気。勝ち気。きかん坊。
腕白。らんぼう。意地悪。
例:「キカネこだ」(乱暴な子だ)。
キガネ
使用地域:遊佐・大鳥
山形(最上)
真室川の方言・民俗・子供の遊び(1978年、矢口中三)キカナァェ
①きかない。気―。
②~以上だ。倍で―。
③腕白な。さわがしい。―ンボゴ(子供)だ。
キカナァェグ
①~以上に。倍で―モラタ。
②さわがしく。うるさく。―スンナ(するな)。
キカナシ
①腕白者。
②騒ぐ事。あんまり―スンナ。
山形(村山)
明治のくらし 山形市本沢地区の民俗(1983年、本沢盛淳)キカネ
意味:うんと云わないこと。
負け嫌いのはげしい気性。
山形(置賜)
白鷹方言 ぼんがら(1961年、奥村幸雄)きかず、きかんぽ
意味:いたずらな子供
きかない
意味:聞かない いたずらな
宮城(全般)
宮城県史20 民俗Ⅱ(1960年、宮城県)キカネェ kɯkanæ ː注)ɯ は、中舌寄りの音声補助記号で表記
意味:勝気。乱暴。言うことをきかない意から。
宮城(仙台ほか)
仙台方言集(1919年、土井八枝)きかない(形)
意味:不従順な(いふことをきかないの意)
例:「きかない子で困ります」
石の巻弁 語彙編(1932年、弁天丸孝)
きかねぁ※右と同じ → 「きかねぁ」と同じ
意味:強い、又従順でない意味に用ふ。
例:「この子わ きかねぁ盛りで困る」
きかず
右(※)と同じにてあばれっ子の意。
「きかずわらす」などと云ふ。
金成町史(1973年、金成町史編纂委員会)
きかねぇ
意味:喧嘩がつよい
きかずこ
意味:喧嘩のつよい子
田尻町史 上巻(1982年、田尻町史編さん委員会)
きかずやろ
意味:乱暴なこども
きかねぇ
意味:乱暴な
福島(全般)
福島県方言辞典(1935年、児玉卯一郎)キカナイ【形】
意味:強い
例:あの人わ きかないぞ
使用地域:会津・浜通・県北・中部・県南
キカネェーナ【句】 意味:強いな
例:お前わ とても きかねえーな
使用地域:会津・浜通・県北・中部・県南
キカンボ【名】
意味:腕白者
例:あの子供わ きかんぼだ
使用地域:会津・浜通・県北・中部・県南
キカナカンベー【句】
意味:強いでせう
使用地域:浜通・中部・県南
福島(会津)
若松市史(1941年、若松市役所)きかない
意味:強い、順従ならぬ
会津方言集(1978年、菊地芳男)
きかねえ
意味:強い、意地っぱり
例:あれは きかねえ男だ
会津方言辞典(1983年、龍川清・佐藤忠彦)
きかない【形】※「きかねぇえ」の「ぇえ」は中舌的な母音。
(1)強い、きつい
用例:「となりの太郎は―ぞ」
同義語的方言:きかねぇえ
(2)従順でない
用例:「うちの娘はキカナクて困る」
きかんぼ
意味:腕白小僧
奥州語の文法に於ける「え・あ中間音」と同。
山都町史 第三巻 民俗編(1986年、山都町史編さん委員会)
きかね
意味:意志がつよい。強情な。言うことをきかない。
会津方部 方言の手引書(2008年、蜃気楼)
きかねぇー
(1) きつい
例:なってもたまげねぇー、きかねぇ女子 (おなご) だぁ。
(2) 従順でない・(言うことを)きかない
例:親の言 (づ) う事 (ごと) なの、まぁず きかねぇなぁ。
福島(浜通り北部)
高平方言集(2005年、高平方言教室)キカネ
意味:頑固・腕白で乱暴者
例:あいつは なかなか キカネ やつだ
福島(浜通り南部)
いわき方言(1975年、高木稲水)きかねえ(形容詞)
解説:
従順でない。いうことをきかぬの意
「きかねえがぎだ」などをいう。
「きかんぼ」(あばれんぼ)ということばもある。
富岡町史 第三巻 民俗 考古編(1987年、富岡町史編纂委員会)
キカネエ
意味:強い
キカンボ
意味:腕白
福島(中通り中部)
郡山の方言(1989年、福島県郡山市教育委員会)キカネ(形)
意味:強情な。強気な。喧嘩が早い。
キカネー(形)
意味:聞かない。生意気な。気が強い。効き目がない。
キカンボ(名)
意味:腕白。あばれんぼう。
旧塩澤村地域遺産のことばと地名(2013年、菅野八作)
キカネエ
意味:気が強い
用例:キカネエ人だがら
どごんわらしえ 故郷福島県「正直」の言葉(2017、鈴木節子)
きかねえ
意味:(言うことを)きかない・きかん坊・気が強い・強情
福島(中通り南部)
鏡石町史 第四巻 民俗編(1984年、鏡石町)キカネェーナ
意味:強い、強情
例:「お前はキカネェー女だナ」
天栄村史 第四巻 民俗編(1989年、天栄村史編纂委員会)
きかねえな
意味:強い強情
石川町史 第七巻 下 各論編2 民俗(2011年、福島県石川町町史編纂委員会)
きかね
意味:気が強い
編集後記
奥州/東北各地の言語を後世に残すためには、東北方言の公用語化が不可欠です。
奥州語は、
奥州/東北6県の方言資料を基に、
広範囲に共通の用法で構成されています。
公用語化により、
次世代に継承できる環境を
整えていければ幸いです。
編集者:千葉光