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4/29/2025

眞丁(までえ・まで)- 用法編

奥州東北語の公用語化の一環として、各地の
言語資料を基に、ここでとりあげる語の意味
・漢字表記・用法などについて整理しました。

編集者:千葉光

目次:

01. 意味
02. 漢字表記について
 - 津軽方言集
 - 米澤言音考
 - 「真体・真手」は不可
03. 活用
04. 用例
 - 丁寧①:眞丁に
 - 丁寧②:眞丁だ・眞丁な
 - 倹約・節約・質素
05. 「けち」の表現
06. 複数の意味
 - 続津軽のことば 第五巻
 - 語源探求 秋田方言辞典
07. 各地の言語資料より
 【青森】全般 津軽 南部
 【秋田】全般 県北 中部 県南 由利 鹿角
 【岩手・旧盛岡藩】全般 盛岡 中部
 【岩手・旧仙台藩】内陸 沿岸
 【山形】全般 庄内 最上 村山 置賜
 【宮城】全般 仙台 三陸圏 県南
 【福島】全般 会津
 【福島・中通り】中部 南部
 【福島・浜通り】北部 南部
08. 編集後記

TOP/トップ ↑

意味

標準東北語としての「眞丁」の意味について
整理しました。

眞丁(までえ・まで)

〔意味〕
 ①丁寧・入念・念入り
 ②節約・倹約・質素
 ③けち・吝嗇(りんしょく)

〔読み方〕までえ・まで
〔品詞〕副詞・形容動詞・名詞

〔漢字表記〕
・「眞鄭」(まてい)に基づく
・「丁」は「鄭」の書きかえ字
①:東北共通
②:山形県以外の東北5県に共通

《補足》
「書きかえ字」とは、1956年に国語審議会が
報告した、当用漢字表にない漢字を含んで構
成されている漢語について、同音の別の漢字
に書き換えるための指針です。

目次 ↑

漢字表記について

漢字表記「眞丁」は、後述する「津軽方言集
」「米澤言音考」の解説にある「眞鄭」に基
づきます。

「眞」については、新字体である「真」で表
記することもできますが、同じ画数であるこ
とから、当方では旧字体である「眞」を用い
ています。

「丁」(てい)は「鄭」の書きかえ字ですが
、このように語尾を伸ばす言い方は、東北の
言語では「舎弟」(しゃで)のように短音で
発音されることもあります。

例:
眞丁(まてい) :までえ・ま
舎弟(しゃてい):しゃでえ・しゃ

この発音規則に基づき、「眞丁」という漢字
表記で、「までえ・まで」と二通りの読み方
に対応させることができます。

尚、「丁」には、「丁寧・丁重」などの意味
があります。

次に「津輕方言集」「米澤言音考」について
とりあげます。

目次 ↑

漢字表記 ↑

津輕方言集
津輕方言集(齋藤大衛・神正民, 1902年)
まていに
〔意味〕テイネイニ
〔解説〕
 物事ヲ丁寧(テイネイ)ニスルニ云フ、
 眞鄭(マテイ)ニト云ヘル語カ

この資料では、「眞鄭(マテイ)にと言え
る語か」とあります。おそらく、音韻面に
基づいて、この語を挙げたものと思われま
す。

目次 ↑

漢字表記 ↑

米澤言音考
米澤言音考(内田慶三, 1902年)
までえに
〔意味〕丁寧に。眞鄭にナリ。
〔用例〕「——、かし-えぐ」

この資料では、「眞鄭に也」とあります。お
そらく、音韻面に基づいて、この語を挙げた
ものと思われます。

《補足》
*資料上では、見出し語の「までに」、
 用例の「かしぐ(稼ぐ)」の「え」を
 、「江」の変体仮名で表記。
 「かしえぐ」の「ぐ」は、「く」の右方
 に黒点を施し鼻濁音表記。

目次 ↑

漢字表記 ↑

「真体・真手」は不可
東北各地の言語資料では、主に「またい(真
体・全い)」「まて(真手)」を語源として
挙げていますが、当方では、次に示す理由で
、これらは漢字表記には適さないと考えます。

またい(真体・全い):
「またい」が語源ならば、東北各地の言語資
料に、「たい」に対応する箇所を「てァ」な
ど、「え・あ中間音」表記のものが見られる
はずだが、全く見当たらず、語源の妥当性に
疑問が残る。

まて(真手):
「真手」が語源ならば、「まで」と語尾を
伸ばす言い方が派生するとは考えにくい。漢
字の読み方も、語尾を伸ばす「まで」に対
応していない。

目次 ↑

漢字表記 ↑

活用

「眞丁」の標準東北語としての活用について
整理しました。

活用:形容動詞
〔眞丁〕活用:形容動詞

目次 ↑

活用 ↑

用例

用法を三通りに分けて整理しました。

目次 ↑

丁寧①:眞丁に
「眞丁に」(丁寧に)の用例です。その場の
状況や文脈により、「入念・念入り・綿密」
などの意味合いにもなります。

〔眞丁に〕
〔眞丁に〕丁寧に
*表記法:「え・あ中間音」を参照

用例 ↑

丁寧②:眞丁だ・眞丁な
「眞丁だ・眞丁な」(丁寧だ・丁寧な)の用
例です。

〔眞丁だ・眞丁な〕
〔眞丁だ・眞丁な〕丁寧だ・丁寧な
*表記法:「ha助詞」を参照

用例 ↑

倹約・節約・質素
〔倹約・節約・質素〕
〔眞丁〕倹約・節約・質素
*表記法:「え・あ中間音」を参照

尚、山形県(内陸・庄内)では、この用法は
使われていないようです。

目次 ↑

用例 ↑

「けち」の表現

東北各地の言語資料より、「けち・吝嗇(り
んしょく)」(*)を揶揄する表現について
整理しました。

*吝嗇:ひどく物惜しみをすること。けち。

東北各地の「けち・吝嗇」の表現:
【まで糞(―くそ)】
青森(津軽・南部)、岩手(旧仙台藩)、
福島(会津)

【まで助(―すけ)】
青森(南部)、岩手(旧盛岡・仙台藩)、
宮城

【まで子・までっ子・まて子(―こ)】
秋田、岩手(旧盛岡・仙台藩)、宮城

【までほえど】
秋田(鹿角)、岩手(旧盛岡藩)

【までかす】
岩手(旧仙台藩)、宮城

【まで者(―しゃ)】
青森(南部)

【までえ屋(―や)】
宮城

【までこぎ】
岩手(旧盛岡藩)

【まてっぽ】
福島(会津)

尚、山形県(庄内・内陸)には、この用法は
ないようです。

目次 ↑

「けち」の表現 ↑

複数の意味

次の津軽・秋田の言語資料では、「眞丁」の
意味について数通りに分類し、詳細にとりあ
げています。

目次 ↑

続津軽のことば 第五巻
続津軽のことば 第五巻(補遺編五)(鳴海助一, 1967年)
までだ 形容動詞

〔解説〕
津軽方言の中の重要なものの一つ。
(中略)
まず、再三既出の通り、標準語の形容動詞と
方言の形容動詞では、その活用の仕方にちが
いがあるので、ここでもう一度、簡単に表示
してみる。

 (標準語)   (方言)
①静かだろウヨ までべォン (未然形)
②静かだっタ  ——     (連用形)
 静か綺麗ダ まで困ル  (連用形)
 静か歩ク  まで書グ  (連用形)
③静か    まで    (終止形
④静か晩デス まで人ダ  (連体形)
⑤静かなら(バ) までバエバテ(仮定形)
⑥——     ——     (命令形)

(中略)

②の「静かだっ」は「静かであった」の約ま
ったものだから、省いてもよさそうだが、普
通この「だっ・で・に」の三つの形をあげて
いる。

そのテでいくと、方言の②の空らんも、「ま
であ(え)ッたェ」(きちょう面な人であ
ったゼ」などとは普通にいう。

次に、「までだ」の意味についても、もう一
度たしかめておきたい。いろいろな意味を含
んでいる。

①丁寧なこと。
(字、マデーネ書げ。)

②丹念なこと。
(仕事、なんでもマデダ人だ。)

③念入りにする。
(通信表、マデーネしまっておげ)

④几帖面なこと。
(あまりマデダどごで嫌われる。)

⑤倹約をする。
(物、マデデ、あれァカマド持ちだ)

⑥吝嗇(りんしょく)
(マデクソダおやじだ。)

⑦けちなこと。
(あんまりマデクソデ、嫁ァ逃げだ)


なお、前記の文法表⑤の「までだバエバテ」
というのは、例えば、副業のワラ細工や、女
性の裁縫や、その他何の仕事でも、「粗末で
、しかもハガいかない」というような場合
、「せめて、仕事ァまでだばえばて」などと
いう。

少しぐらい時間がかかっても、した仕事が(
作った品物が)普通の出来であれば、いいけ
れども、ということ。

能率があがらない上に、出来たものが、売り
物にもならず、物の役にも立たないのでは話
しにならない。仕事のなれ初めの若者たちを
、親父さんか誰かがこう言ってはたしなめる
・・・。

この資料では、形容動詞「までだ」の活用に
加えて、意味を7通りに分類してとりあげて
います。

活用については、標準語の「静か」に、方言
の「まで」を対応させる形となっています。

目次 ↑

複数の意味 ↑

語源探求 秋田方言辞典
語源探求 秋田方言辞典(中山健, 2001年)
まて〔形容動詞〕
まてこ・まてすけ・まてくそ〔名詞〕

(1) まじめなさま。実直。正直。堅実。
〔マテ〕平
〔マデ〕雄

「アンタニ マデダ 男バ アマリエネァ」


(2) 念入りなさま。ていねい。
〔マテ〕鹿 北 平 由
〔マデ〕鹿 北 山 南 河 仙 雄 由
〔マティ〕山
〔マテー〕仙
名詞:〔マテスケ・マテクソ〕
 北(ばかていねいな人。やや卑しめて言う)

「モット マデニ オ辞儀セ」
「顔 モット マデニ 洗エ」
「太郎バ ナニ仕事ヤラセデモ マデダガラ 安心ダ」


(3) 注意が行き届いているさま。用意周到。慎重。
〔マテ〕鹿
〔マデ〕山 由

「アイヅサ 頼メバ、マデダガラ 大丈夫ダ」


(4) 倹約でつつましいさま。節倹。
〔マテ〕鹿 北
〔マデ〕北 山

名詞:倹約な人
〔マデコ・マデッコ〕北
〔マテスケ〕鹿(やや卑しめて言う)

「アノ 人ァ マデニ シテ 金 タメダナダ」


(5) 物惜しみをするさま。けち。
〔マティ〕山
〔マデ〕鹿 北 山

名詞:けちんぼ・罵語
〔マテホイト・マデホエド〕鹿
〔マティコ〕山
〔マデコ〕北

「アノ 人 アンマリ マデダガラ、嫌ワレル」
*例文の「ダ・バ」の「」は鼻濁音表記
*使用郡市名
 鹿:鹿角郡  北:北秋田郡 山:山本郡
 南:南秋田郡 河:河辺郡  仙:仙北郡
 平:平鹿郡  雄:雄勝郡  由:由利郡

この資料では、意味を5通りに分類していま
すが、使用地域が最も多いのは、東北共通の
(2)です。

(1)は青森(南部地方)・岩手(旧盛岡藩領
)・山形(庄内・内陸)・福島(会津)にも
見られますが、秋田県域での分布は限られて
いるようです。

(4)(5)は山形を除く東北5県に見られます。

目次 ↑

複数の意味 ↑

各地の言語資料より

東北各地の言語資料より、意味・用例などを
整理しました。

注)言語資料名の( )内は、発行年、著者名

目次 ↑

青森(全般)
東奥日用語辞典及青森県方言集(東奥日報社, 1932年)
マデイニ
〔意味〕丁寧に

マデダ
〔意味〕吝嗇だ又は節儉だ

目次 ↑

青森県方言集(菅沼貴一, 1936年)
マデーニ
〔記号〕madeːne
〔品詞〕副
〔言語使用区域〕津軽・南部
〔解説〕
 丁寧に、精細に、まて(眞手、左右手、両手)
 大切なものを両手で取扱ふから
 大事に丁寧にするのを
 マデニイニするといふ

マデダ
〔記号〕madeda ́
〔品詞〕動複
〔言語使用区域〕津軽・南部
〔解説〕
 吝嗇だ。あの人は何でもマデダ。
 マデクソともいふ
*資料上では、発音記号 /e/ の上部に
 中舌寄りの[¨](ウムラウト)付き

解説中の「マデニイニする」は、
「マデイニする」の誤りではないかと思われます。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

青森(津軽地方)
一町田語彙津軽語彙 第2編:(松木明, 1954年)
マデクセェ 形容詞:
〔意味〕
①丁寧すぎること
②話がくどいこと
③しみったれなこと

  マデェネ(丁寧に)のマデェに
接尾語クセェをつけたもの。
クセェは臭いで度のすぎたことを意味する。

〔用例〕
ナニホド アノ フトァ マデクセェ モンダ
なんて あの人は 話がくどすぎるんでしょう

目次 ↑

津軽 森田村方言集(木村国史郎, 1979年)
マデダ

①ていねい。
「マデネヒ」といえば、ていねいに取扱いなさい。

②節約。「あの人マデダ」といえば、
 節約を通りこしてケチだという意味にもなる。

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津軽弁死語辞典(泉谷栄, 2000年)
までに
〔意味〕ていねいに。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

青森(南部地方)
教育適用 南部方言集(簗瀬栄, 1906年)
までだひと
〔意味〕
儉約(けんやく)なる人のことにて眞手人
(まてひと)にいふは非(ひ)なり
眞手人(まてひと)は正直(しやうずき)
なる人をいふ

目次 ↑

青森県南 岩手県北 八戸地方 方言辞典(寺井義弘, 1986年)
までな(連体)
〔意味〕実直な。
〔例〕までな人だ(実直な人だ)。

までに(副)
〔意味〕丁寧に。
〔例〕までにすろ(丁寧にしなさい)。

までにする(句)
〔意味〕倹約する。

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南部のことば(佐藤政五郎, 1992年)
までに
〔意味〕丁寧に
〔例〕
 この仕事ば、までにしてけさい。
 納めるどごぁいつもと違るすけ。

までくそ
〔意味〕ていねいすき゚ること
〔解説〕けちんぼ。

までしゃ・まですけ
〔意味〕しまりや・けちんぼ
まで・までこ
〔意味〕倹約でつつましいこと
〔解説〕物を大事にしたり家計をつつましくすること。
〔例〕あそこのかっちゃ物よまでこにする人だ。

〔意味②〕仕事がていねいなこと。
〔例〕あの大工様、仕事よ最後までまでに
   してけるへで安心だ。

〔意味③〕けちんぼ
〔例〕あの親父ぁまででまでで、寄付なん
   か全くしない人だ。
*引用欄を2つに分けて見やすくしています。

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各地の言語資料より ↑

秋田(全般)
秋田方言(秋田県学務部学務課, 1929年)
まで
〔意味〕吝嗇。
〔品詞〕名詞
〔方言採集地〕鹿角郡

まで
〔意味〕丁寧だ。
〔品詞〕形容動詞
〔方言採集地〕山本郡
〔例〕「までだ男だな。」

までに
〔意味〕丁寧に、入念に。
〔品詞〕副詞
〔方言採集地〕仙北郡
〔例〕「もっとまでに御辞儀せ。」

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秋田の方言(打矢義雄, 1970年)
マデニ
〔意味〕丁寧に。
〔用例〕あの人は、マデニ仕事す人だ。
〔解説〕
 これは元来形容動詞で「マデダ仕事をする
 」という言い方もある)

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各地の言語資料より ↑

秋田(県北)
二ツ井町史(二ツ井町町史編さん委員会, 1977年)
マティダ
〔意味〕丁寧だ。
〔例〕仕事コマティダ=仕事が丁寧だ。

〔意味〕吝嗇〔ケチ〕だ。その人をマテコという。
〔例〕ノリデネェマテコだ=極端な〔常識で考えられない〕けちだ。

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田代町史資料 第四輯 田代町の方言(秋田県田代町, 1983年)
マデダ
① 倹約家のことをいうのである。
② 吝嗇のことをいう。
③ 丁寧・念入りなものの扱い方をいう。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

秋田(中部)
男鹿寒風山麓方言民俗誌(吉田三郎, 1971年)
までな
〔意味〕ていねい、注意深い。
〔例〕
「本家の、あねちゃはほんとにまでなふと
 だなあ。あいだば、おがも、気に入って
 いるべひなぁ。」

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

秋田(県南)
おらほの言葉 西木村(佐藤ミキ子, 1997年)
マデ
〔意味〕何事にもきめ細かくていねいなこと。
〔品詞〕形容動詞

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

秋田(由利)
村の方言集(村松長太, 1965年)
マデ
〔意味〕慎重、ていねい、という意味。語源不明。

目次 ↑

本荘・由利のことばっこ(本荘市教育委員会, 2004年)
までだ・までんだ
〔意味〕巧者だ。丁寧だ。
〔品詞〕形容動詞
〔例〕
「このこだしこ までだ つぐりしてで 誰
 作たもんだでろがな。
(このコダシは上手な作りをしていて誰が
 作ったものだろうか)」 

までに
〔意味〕丁寧に。入念に。
〔品詞〕副詞

まてー・までん
〔意味〕丁寧なさま。入念なさま。
〔品詞〕形容動詞

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

秋田(鹿角地方:旧盛岡藩領)
鹿角方言集(内田武志, 1936年)
マデ
〔意味〕物を粗末にせぬ事。丁寧な事。
    入念にする事。
〔例〕「——ニ仕舞テ置グ」
   「——ニ拭エダ」

マデダフト
〔意味〕物を粗末にせず、萬事こまかな人。
    始末屋。

マデホエド
〔意味〕吝ん坊。けちんぼ。

《補足》
「マデホエド」の「ホエド」は東北共通の語
ですが、「乞食」という意味です。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(全般)
岩手方言集(小松代融一, 1959年)
旧南部の部
マテ(-)
〔意味〕倹約、吝、ていねい

マデ(スケ)
〔意味〕倹約、吝、ていねい

マデコ
〔意味〕倹約家、吝

マデコギ
〔意味〕吝

マデスケ
〔意味〕吝、倹約家

マデスポー
〔意味〕吝、倹約家

マデッコ
〔意味〕しみったれ

マテッコニ
〔意味〕ていねいに

マデナ
〔意味〕ていねいな

マデニスル
〔意味〕倹約する

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(盛岡)
盛岡のことば(佐藤好文, 1981年)
マデ [真体](形)
①まじめなさま。律儀なさま。念入りなさま。
 ていねいなさま。実直なさま。
〔例〕「まてに洗う」

②倹約でつましいさま。
〔例〕「米みそをまてにする」

③物惜しみするさま。けち。
〔例〕あの人は何でもまてだ」
マデナ
①ていねいな。
②つましやかな。
③けちな。

マデニ
①ていねいに。
②つましやかに。
③けちに。

マデスケ [・・・助](名)
〔意味〕物おしみする者。けちんぼ。

マデッコ [真体](名)「こ」は接尾語
①倹約でつましいこと。また、そのような人。倹約家。
②物惜しみすること。また、そのような人。
 けちんぼう。しみったれ。

マデホエド [真体陪堂](名)
〔意味〕吝嗇家をののしっていう語。
*資料上は「デ」「ド」を、「テ」「ト」
 の右肩に「・」を付して異濁音表記。

《補足》
「マデホエド」の「ホエド」は、仏教語の
「陪堂(ほいとう」に由来しますが、「乞
食」という意味です。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧盛岡藩(中部)
遠野民俗資料 遠野ことば(俵田藤次郎・高橋幸吉, 1982年)
マデェー
〔意味〕叮嚀(ていねい)、倹約。
〔例〕
 あのワラスァ(子供は)折紙をマデェー
 (ていねい)に上手に折ってるナ、紙も
 マデェー(倹約)に無駄なぐ使ってんすよ。

マデ助
〔意味〕物おしみする人、倹約家。
〔例〕あのマデ助ァ、なんぼなんでも度ァ
   すぎんす。

目次 ↑

岩手県央部 紫波の言葉(山田長耕, 2007年)
までな
〔意味〕質素な

までに
〔意味〕丁寧に、質素に

までにする
〔意味〕質素にする
〔例〕あの人ぁ んと物までにする人で、
   それで立派な蔵建でだんだもな。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧仙台藩(内陸)
胆沢町史9 民俗編2(胆沢町, 1987年)
までぇ・までぇこ・までくそ
〔意味〕丁寧。丹精。倹約。りんしょく

まですけ
〔意味〕けちんぼ

目次 ↑

平泉町史 自然編・民俗編1(平泉町史編纂委員会, 1997年)
 平泉の方言(小松代融一)
まで
〔解説〕
まて。詳しく。丁寧。「まで(迄)」では
ない。節約家。無駄なく。吝ん坊。

〔例〕
「までにかだってきかしぇろ=
(詳しく・丁寧に)話して聞かせろ」

「たげぁもんだか、までにつけぁ=
 高価なものだから、節約して使え」

「とてもまでなやずだ=とてもケチな奴だ」
までかす
〔意味〕吝ん坊。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

岩手・旧仙台藩(沿岸)
黄海村史(黄海村史編纂委員会, 1960年)
までいに
〔意味〕叮嚀に。倹約。

まですけ
〔意味〕けちんぼ

目次 ↑

気仙方言辞典(金野菊三郎, 1978年)
までー 「形動」
①丁寧。綿密。
〔例〕までーに調べろ。

②倹約する。
〔例〕何事もまでーな家だ。

③吝嗇。けち。
〔例〕まで助。


まですけ 「名」
〔意味〕吝嗇家。けちんぼ。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

山形(全般)
山形県方言集(山形県師範学校, 1933年)
まで
〔意味〕手間取つて仕事をすること
〔品詞〕名詞・副詞
〔使用地方〕庄内・村山・置賜
〔例〕
こゞらげた糸を、までにほどぐ。
(ほつれた糸を丁寧にほぐす。)


まてい
〔意味〕手間取つて仕事をすること
〔品詞〕名詞・副詞
〔使用地方〕村山

目次 ↑

山形県方言辞典(山形県方言研究会, 1970年)
マで、マテー 形容動詞
〔意味〕
ていねい。念入りに仕事をするさま。
こせこせしないさま。

〔例〕
「——に探す」
「あいつの仕事は——ダ」
「——にかせぐ」

〔分布地点〕全県的

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

山形(庄内)
庄内方言辞典(佐藤雪雄, 1992年)
マデ
〔意味〕
 お人よし。正直者。(遊佐)
 ていねいな人。真面目な人。(鶴岡・加茂)。
〔品詞〕名詞


マデ
〔意味〕
 何事にもきめ細かくていねいなこと。
 ていねいにやること。
〔品詞〕形容動詞
〔例〕
「あの人は仕事マデだもの」。デは鼻音。
(遊佐・宮野浦・立谷沢・鶴岡・湯野浜)。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

山形(最上)
葛麓の華(常葉金太郎, 1922年)
新庄方言集

までに
〔意味〕綿密に

目次 ↑

及位の方言(高橋良雄, 1982年)
まで
〔意味〕ていねい。丁寧。
〔品詞〕名詞
〔例〕
「ほんげぁ までん しねぁたて ええはげぁ
――そんなにていねいにしなくともいいから」。

目次 ↑

続 かつろく風土記(1984年、笹喜四郎)
まで
〔意味〕ていねい
〔例〕することほんてまでだ

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

山形(村山)
羽前村山方言(斎藤義七郎, 1934年)
マデ
1.おうような(「軽率な」の反対)
2.手間かかつて丁寧に仕事をすること

〔例〕
・マデナ ネゴダ(おうような猫だ)
・アノ シト スゴト ズェブン マデダ
(あの人の仕事は随分丁寧で手間がかかる)
《補足》
おうような:
落ち着きがあって、小さなことにこせこせしないさま。

目次 ↑

明治のくらし 山形市本沢地区の民俗(本沢盛淳, 1983年)
マデ
〔意味〕丁寧。念入り。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

山形(置賜)
米沢方言辞典(米沢女子短期大学国語研究部, 1969年)
までに
〔意味〕丁寧に。「真手」から出た語で、完全な
    仕事をする意。
〔品詞〕名詞
〔例〕「マデな人だ 」


まで
〔意味〕真面目。実直。正直。
〔品詞〕名詞
〔例〕「マデな人だ」

《補足》
「丁寧」と「真面目・実直・正直」と二通り
の意味がありますが、例文は両者とも「マデ
な人だ」と同じ使い方です。

目次 ↑

各地の言語資料より ↑

宮城(全般)
宮城県史20 民俗Ⅱ(宮城県史編纂委員会, 1960年)
方言(藤原勉)
まて mɑde  まてい mɑdeː
〔意味〕丁寧・倹約。
〔例〕
「まていに書け」「まてに暮らしてる」。
まてかす mɑdekɑsɯ
〔意味〕けちんぼ。 栗原郡

まてこ mɑdeko  まていや mɑdeː
〔意味〕まてな人(倹約家)。

まてすけ mɑdesɯge
〔意味〕けちんぼ。 登米郡。岩手県和賀郡

《補足》
見出し語の横の発音記号が実際音のため、
「まて」の「て」は濁音化し、「で」とな
ります。

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各地の言語資料より ↑

宮城(仙台)
仙台の方言(土井八枝, 1938年)
まてい(マデ) 名
1、丁寧。 2、儉約。

1、
「いそぎいんからまていに縫って頂きす」
(急がないから丁寧に縫つて下さい)

1、
「まっとまていに食べさえ、勿體ながす」
(もつと丁寧におあがり、勿體ないよ)

2、「まてーに暮す」(儉約に暮す)
まていや(マデーヤ) 名
〔意味〕儉約家、しまりや。
〔例〕
「あの人なかなかまてーやだお。寄附して
 けんべかや」
(あの人は中々しまりやだが、寄附して
 くれるかしら)

《補足》
資料上では、見出し語の横のカタカナ表記は
、フリガナとして表示されてます。見出し語
は本来のかなづかい、フリガナは訛語として
区別して表記されています。

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各地の言語資料より ↑

宮城(三陸圏)
石の巻弁 語彙編(弁天丸孝, 1932年)
まで、までえ
〔意味〕叮嚀と儉約との兩意味の語。
〔用例〕
「までに書えてやった」
「までにすて暮らせば金ものごる」

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各地の言語資料より ↑

宮城(県南)
白石市史3の(3) 特別史(下)の2(白石市史編さん委員会, 1987年)
 宮城県白石地方の方言と訛語(菅野新一)
までー(まてい)
(1)丁寧・念入り。
〔例〕
「あの人の仕事は、なんでも、までーだ」
「までーに荷作りする」

(2)倹約・質素・節約。
〔例〕
「あの人の暮すぶりは、ほんとに、までーだ」
「おらえ(おれの家)では、までーにすて暮
 さねーど、なんぼにも(どうしても)食っ
 てがんねー(食っていかれない)」
までーや(まていや=まてい屋)
〔意味〕倹約家・締り屋。
〔例〕「あれは、ながながのまでーやだ」。

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各地の言語資料より ↑

福島(全般)
福島県方言辞典(児玉卯一郎, 1935年)
マテ
〔意味〕丁寧
〔品詞〕名詞
〔例〕まつと仕事をまてにやれ
〔使用地域〕会津

マテイ
〔意味〕丁寧だ
〔品詞〕形容詞
〔例〕仕事わまてい
〔使用地域〕会津、浜通、中通北・中・南

マディー
〔意味〕丁寧だ
〔品詞〕形容詞
〔使用地域〕会津、浜通、中通中

マデイニ
〔意味〕丁寧に
〔品詞〕副詞
〔例〕までいにやれ
〔使用地域〕会津、浜通、中通北・中・南

マテッポ
〔意味〕吝嗇な人
〔品詞〕名詞
〔例〕あれわまてつぽだから出すまえ
〔使用地域〕会津

《補足》
例文の「仕事わ」「あれわ」の「わ」は、
助詞「は」です。

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各地の言語資料より ↑

福島(会津)
若松市史(若松市役所, 1941年)
まて
〔意味〕吝嗇又儉約
〔品詞〕名詞

まてっぽ
〔意味〕けちな人
〔品詞〕名詞

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会津方言辞典(龍川清・佐藤忠彦, 1983年)
まて・まで
(1) 倹約    「——する人」
(2) けち    「あの人は——な人だ」
(3) 丁寧、念入り「——に扱う」
(4) 真面目   「——な人間だ」


まで-くそ
〔意味〕けちん坊(罵)

まてっぽ
〔意味〕けちな人

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会津只見の方言(只見町史編さん委員会, 2002年)
まて・までー 名詞・形容動詞
①堅実なさま。しっかりしたさま。
「某の仕事は――だ」

②節約してむだ遣いしないこと。
 倹約なさま。
「某は――で、物持ちだ」

③丁寧なさま。

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福島(中通り中部)
郡山の方言(福島県郡山市教育委員会, 1989年)
マテイ(形)
〔意味〕丁寧。〈日和田〉

マデイ(形)
〔意味〕丁寧。

マデイニ(副)
〔意味〕丁寧に。〈日和田・三穂田〉

マデイニシ(副+動)
〔意味〕丁寧にやりなさい。の意〈富久山〉

マテエ(形)
〔意味〕丁寧。〈喜久田〉

マデエ(形)
〔意味〕丁寧。〈全市〉

マデェダ(形動)
〔意味〕くわしい。倹約する。〈湖南〉

マデーダ(形動)
〔意味〕丁寧だ。〈河内〉

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田村市史4 田村市のことば(福島県田村市教育委員会, 2010年)
マデイ、マデ
〔意味〕丁寧
〔例〕あの人はマデだ

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各地の言語資料より ↑

福島(中通り南部)
鏡石町史 第四巻 民俗編(鏡石町, 1984年)
マデニ
〔意味〕丁寧に
〔例〕「マデニ草 むしれ」

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石川町史 第七巻 下 各論編2 民俗(福島県石川町町史編纂委員会, 2011年)
までい
〔意味〕丁寧

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福島(浜通り北部)
福島縣中村町方言集(武藤要, 1931年)
まてえなひと
〔意味〕倹約家
〔例〕「あのひたァ、なんぼまでェなひとだかしんねェ。」
《補足》
見出し語の「まてえ」は、例文では「までェ
」と、「て」が濁音化しています。

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高平方言集(高平方言教室, 2005年)
マデー
〔意味〕ていねい
〔例〕仕事はマデーにやれ

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大熊町方言集(おおくまふるさと塾, 2019年)
マデー
〔意味〕ていねい
〔用例〕代かぎ、マデーにやれよ

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各地の言語資料より ↑

福島(浜通り南部)
いわき北部史 四倉の歴史と伝説(本多徳次, 1986年)
までい
〔意味〕丁寧

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富岡町史 第三巻 民俗 考古編(富岡町史編纂委員会, 1987年)
マデイ
〔意味〕ていねい

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いわき市小川町地方の方言(草野二郎, 1988年)
までえに
〔意味〕ていねえに。
〔用例〕までえに草むしってをげ。

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いわき語の海へ(夏井芳徳, 2013年)
までぇ
〔意味〕丁寧。念入り。丹念に。
〔例〕「おめぇの仕事は、いづもまでぇだなぁ。大したもんだ」。

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各地の言語資料より ↑

編集後記

かつての日高見国である奥州東北の言語を未
来へ継承していくためには、公用語化が不可
欠です。

当方の提唱する文法・表記法は国語の東北版
(標準東北語)として、東北各地の言語資料
を基に、東北の広範囲に共通の用法で構成さ
れており、文章語として公文書や記事などに
使うことを想定しています。

当然ながら、青森から福島まで、東北全土の
言語に対応しているため、東北各地の言語の
地域公用語化にも貢献できるはずです。

当方では、標準東北語を、中国における北京
官話(普通語)に相当するものと位置付けて
いますが、「方言」から公用語化への脱却が
、明治以降、自らの言語を否定され、劣等感
を植え付けられた東北の力を引き出す原動力
となるはずです。

編集者:千葉光

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