目次:
01. 語源探求 秋田方言辞典(A) がんす・がす
02. 編集後記
編集:千葉光
語源探求 秋田方言辞典
この資料では、「がんす・がす」を二系統の別語としてとりあげています。
見出し語を
(A) がんす・がす
(B) がんす・がす
と区別して掲載し、同音異義語であることを示しています。
ここでは「(A) がんす・がす」
についてとりあげます。
(A) がんす・がす
語源探求 秋田方言辞典(中山健, 2001年)(A) がんす・がす〔助動詞〕--- 引用ここまで ---
【意味】
形容詞、および形容詞型活用の助動詞の
終止形に付いて丁寧な断定を表す。
です。
【音声表記・使用郡市名】
〔ガンス〕秋田市・河辺郡・平鹿郡・由利郡
〔ガンシ〕秋田市
〔グァンシ〕秋田市
〔ガス〕南秋田郡・秋田市・河辺郡・平鹿郡・雄勝郡・由利郡
〔ガシ〕山本郡
【用例】
「良(エ)ガンス」「ンメァガンス」
※秋田市
「帰ラナガンシ」「高ァグァンシ」
「寒ミグァンシ」「ナケ゚ァガス」
「ミンチケァガス」「良(エ)ガス」
「アノ 人モ オモシレガンスンベナ」
「オレンダンバ 行ガネァガス」
※本荘市
「マンダ エガンスネガ」
「オ正月ッタッテ ナンタゴド ネァガンシタ」
【語源考察】
郷土の方言では、
形容詞の終止形の専用化とともに、
形容詞語尾のグは独立し
形式様態詞の接尾語として用いられる。
ガンスは、
このグにアンスが付いて成立したもので、
丁寧な断定を表す。
ただし、
形容詞および同型活用の助動詞以外には
付かない。
ガンスには「ござんす」の転
(ゴザンス→ゴワンス→ゴアンス→ガンス)
で、「あります」「ございます」の意の
ものがある。
どちらも丁寧(聞き手導敬)の語であるが
別語である。
※
「帰(ケァ)ラナガンシ」は
「帰ラネァガンシ」の
「ネァ」が「ナ」に転じたと
考えることもできるが、
アンス・ガンス(グァンス)系の語は、
城下町に用いられた語なので、
形容詞にも雅語意識がはたらき、
〔ナグ・アンス→ナガンス〕と
なったものであろう。
※
「良(ヨ)ガス」(平) 「良(ヨ)ガシンベ」(山)
「ヨゴアンシナ」(市)などは、
ヨクのウ音便形ヨウに「あります」の意の
補助動詞ガンス(ゴアンス)の付いた
「ヨーガンス」の転と考えるべきもの。
「ござる・ごあんす・がんす・がす」の項参照
語源考察において、「ガンス」は
形容詞語尾「グ」に「アンス」が付いて
成立したもので、
丁寧な断定を表すとしています。
奥州語の文法では、これを基に、
「ぐあんす系」として整理しました。
*【がんす・がす】用法編 参照
一方、「ガンス」には「ござんす」の転
(ゴザンス→ゴワンス→ゴアンス→ガンス)
で、「あります」「ございます」の意のもの
もあり、どちらも丁寧(聞き手導敬)の語
ですが、別語であるとしています。
*【がんす・がす】語源 (B) 編 参照
編集後記
奥州/東北の言語を100年後のその先へ継承していくためには、
東北方言の公用語化が不可欠です。
奥州語の文法は、各地の言語資料を基に、
広範囲に共通の用法で構成されています。
公用語化により、
言語を次世代に継承できる環境を
整えていければ幸いです。
編集:千葉光