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6/17/2023

てで

東北方言の公用語化の一環として、
東北(旧奥州)6県の言語資料を基に、
「てで」の意味などについて整理しました。

編集:千葉光


目次:
01. 意味
02. 浜荻(仙台)より
03. 各地の言語資料より
 【青森】全般 津軽 南部
 【秋田】県北 県南
 【岩手:旧南部領】北部 中部
 【山形】庄内 村山 置賜
 【福島】会津 中部(安積地方)
04. 編集後記

意味

てで・てて
〔意味〕父
〔漢字表記〕父

てでなし・てでなしこ゚
〔意味〕私生児。父親のわからない子。
*漢字表記は古語に基づく

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浜荻(仙台)より

江戸末期の仙台の方言辞書である
「浜荻(はまおぎ)」に「てゝ」が
見られます。

仙台方言音韻考(小倉進平, 1932年)
【濱荻】

てゝ
〔意味〕父の事。
〔解説〕
てゝがさきまひ末を見ろなどいふは、
始終おやの見通しの通りならんといふ事也。
諺草に父をてゝごと云は大鏡に有、
てはちと通ず、ごは御也、父御といふ意也。

とゝ(江戸)
--- 引用ここまで ---

〔補足〕
・諺草(ことわざぐさ):江戸中期の辞書
・大鏡(おおかがみ) :平安後期の歴史物語

浜荻は仙台と江戸の言葉を対比する構成に
なっており、仙台の「てゝ」に対応する
江戸言葉を「とゝ」としています。

文献としては、平安後期の「大鏡」より
「諺草に父をてゝごと云」をとりあげて
います。

「ててご」の「て」は「ち」と通じ、
「ご」は「御」であることから、
「父御」という意味であるとしています。

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浜荻(仙台)より ↑

各地の言語資料より

各地の言語資料より、「てで・てて」に ついて整理しました。
*言語資料名の( )内は、著者、発行年

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【青森】全般
東奥日用語辞典及青森県方言集(東奥日報社, 1932年)
テデ
〔意味〕父

テデナシ
〔意味〕私生子

青森県方言集(菅沼貴一, 1936年)
テデ
〔意味〕 夫のこと
〔品詞〕名詞
〔区域〕津軽・南部

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各地の言語資料より ↑

【青森】津軽地方
津軽 森田村方言集(木村国史郎, 1979年)
テデ
〔意味〕
①親父。「イコノ テデ」は、分家の親父。
②夫。

テデナシゴ
〔意味〕私生児。父のないこども。

津軽弁死語辞典(2000年、泉谷栄)
てで
〔意味〕父親。

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各地の言語資料より ↑

【青森】南部地方
南部のことば(佐藤政五郎, 1982年)
てで
〔意味〕父 たまには「祖父」にも。
〔例〕
昔、父は貧乏で粉も食えなくて死んだので、
子は鳥になって「てで、粉、食(け)え」
と鳴く。

ででさん
〔意味〕父さん

てでなし
〔意味〕私生児

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各地の言語資料より ↑

【秋田】県北
二ツ井町史(二ツ井町町史編さん委員会, 1977年)
デェ
〔意味〕父。下流家庭の呼称。

テデェ
〔意味〕デェに同じ、父。

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各地の言語資料より ↑

【秋田】県南
おらほの言葉 西木村(佐藤ミキ子, 1997年)
テデ 名詞。人称代名詞。
〔意味〕父。おとうさん。

テテオヤ 名詞。
〔意味〕父親。

テデナシゴ 名詞。
〔意味〕父親がはっきりわからない子。私生子。

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各地の言語資料より ↑

【岩手:旧南部領】北部
九戸郡誌(岩手県教育会九戸郡部会, 1936年)
てで
〔意味〕父

ててなし
〔意味〕私生兒

軽米町誌(軽米町誌編纂委員会, 1975年)
てで
〔意味〕父(古語)

ててなし
〔意味〕私生児

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各地の言語資料より ↑

【岩手:旧南部領】中部
盛岡のことば(佐藤好文, 1981年)
テデナスコ゚【ててなし-ご】[父無子](名)
〔意味〕父親のはっきりしない子。私生児。
コ゚:鼻濁音

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各地の言語資料より ↑

【山形】庄内地方
庄内方言集 おらが庄内弁(佐藤俊男, 1984年)
てで
〔解説〕
海岸方面(小波渡、温海方面)では父。
一般には老年の寺の下男。

てでおや
〔意味〕父親

てでなしご
〔解説〕
父親が誰だか、はっきりわからないで生れた子。
不義の子。私生児。

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各地の言語資料より ↑

【山形】村山地方
羽前村山方言(斎藤義七郎, 1934年)
テデナスゴ
〔意味〕父無兒 私生兒

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各地の言語資料より ↑

【山形】置賜地方
白鷹方言 ぼんがら(奥村幸雄, 1961年)
ててなしご
〔意味〕私生児

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各地の言語資料より ↑

【福島】会津
会津方言集(菊地芳男, 1978年)
てて
〔意味〕父

ててなしこ゚
〔意味〕私生児
*「こ゚」の半濁点は、資料上では文字の半分位の高さの丸印で表記

会津方言辞典(龍川清・佐藤忠彦, 1983年)
ててなしご てでなしご
〔意味〕私生児

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各地の言語資料より ↑

【福島:中通り】中部(安積地方)
福島県方言辞典(児玉卯一郎, 1935年)
テテ【名】
〔意味〕お父さん
〔使用地域〕中通り中部

郡山の方言(1989年、福島県郡山市教育委員会)
テデナシ(名)
〔意味〕私生児。

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各地の言語資料より ↑

編集後記

東北(旧奥州)の言語を100年後の
その先へ継承していくためには、
東北方言の公用語化が不可欠です。

奥州語の文法は、各地の言語資料を基に、
広範囲に共通の用法で構成されています。

公用語化により、言語を次世代に継承できる
環境を整えていければ幸いです。

編集:千葉光

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