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4/08/2023

土壌は300年元には戻らない(2011年8月)

福島第一原発の爆発から5か月後、
日刊ゲンダイ紙(2011年8月17日付)に、
アメリカの原子力技術者、
アーニー・ガンダーセン氏への
インタビュー記事が掲載されました。

私は記事を見た翌日、
当時使っていたヤフーブログに、
記事を抜粋したものをアップしました。

日刊ゲンダイWEBにも載っていましたが、
いずれはリンク切れになることから、
数年後に当時のことを振り返ることが
出来るようにしておきたいという
思いがありました。

ここで改めて、整理し直したものを
載せたいと思います。
(紙面も手元に保管してあります)

編集:千葉光

日刊ゲンダイより

以下、灰色の背景が抜粋です。

尚、記事中のガンダーセン氏の名前が
「アーノルド」とありますが、
「アーニー」の間違いと思われます。

日刊ゲンダイ(2011年8月17日付)より:
【米国の原発専門家が緊急警告】
福島原発周辺40キロの住民は避難すべきだ


原子力発電に携わってほぼ40年になります。
全米70カ所の原発で運営・管理した経験を
もとにお話しします。

まず日本の方に大変重要なことを
お伝えしなければならない。

それは福島第1原発の4基すべてから、
いまだに放射性物質が放出されている
という事実です。

3月中旬の水素爆発で飛散が終わったと
考えていたら間違いです。
確かに9割はあの時の爆発で放出されたかも
しれない。しかし、それで終わりではない。

【土壌は300年元には戻らない】

ですから環境汚染は計り知れないのです。
放出を防ぐには、建屋を覆いかぶせる
テントなどを使わない限り無理です。

物理的に阻止できるまで、
今後も数カ月間は放射性物質が飛散すると
考えてください。

もう一点、大事なことは
汚染水が建屋の最下層から地中に
流れ出ていると考えられることです。

誰一人として肉眼で確認はできませんが、
これは確かなことだと思います。

炉心は溶融して格納容器の底から
建屋の下にまで落ちていると考えられる。

日本政府は炉心を取り出すまでに
今後10年はかかると言っていますが、
炉心を取り出す技術などありません。

スリーマイル島事故の時は燃料は溶けて
原子炉の底に落ちましたが、
福島の場合は一番底まで
メルトスルーしたのです。

これは建屋の下の土壌と地下水が
汚染されたということで、
一度高濃度に汚染された土壌は
今後300年は消えません。

周辺住民の避難指示は
半径20キロでは不十分です。
最低でも40キロというのが私の考えです。
残念ながら日本政府は
その数字を信じようとしません。
悲しいことです。

【がん患者は100万人単位で増えていく】

あまり煽(あお)りたくありませんが、
今後10年でがんを発症する人は
100万人単位になるかもしれません。

最初の5年で甲状腺がんや
甲状腺異常が顕著になります。

次に50キロ以内の地域で
肺がんの発症率が今よりも20%
上昇するでしょう。
この数字はノースカロライナ大学の
免疫学者スティーブ・ウィング助教授が
算出した数字です。

そして10年で骨腫瘍や白血病、
肝臓がんも増えてくると思われます。

福島の現状というのは
これくらい深刻なのです。
日本政府は十分にこのことを肝に銘じて、
スピーディーな対応を取ってほしいと
切に願います。


▽アーノルド・ガンダーセン氏
原発のコンサルティング会社
「フェアウィンズ・アソシエーツ」
チーフエンジニア。
元原発関連会社上級副社長。
原子力工学が専門で、
スリーマイル島事故の調査でも活躍した。
--- 抜粋ここまで ---

ガンダーセン氏は、
「炉心を取り出す技術などありません」
と明言しており、
放出を防ぐには、建屋を覆いかぶせる
テントなどを使わない限り無理である
ことを指摘しています。

私自身、この視点を基準に、
その後の報道を見てきました。
マスコミが、福一の廃炉が順調に
進んでいるような印象を与える
報道をしても、
信用しないようにしました。

炉心を取り出す技術が存在しないなら、
廃炉は不可能です。

チェルノブイリのように、
物理的に閉じ込めるのが、
現実的な対処法のはずです。

2013年に、ある建築家が福一の
「ダム湖化計画」を提唱しましたが、
この案が最も適切な対処法かもしれません。

また、記事とは別件ですが、
クリス・バズビー博士が、
溶け落ちた核燃料が土中に侵入した
可能性の高いことを指摘しており、
同時並行して、調査を進める必要性が
あります。

しかし日本政府は、
誰に気を使ったのかは知りませんが、
廃炉という大義名分の下、
利権を優先する道を選びました。

その結果、福一周辺の土地が、
おびただしい数のフレコンバッグで
埋め尽くされ、
また、汚染水を薄めて放出することで
アメリカ・EU以外の各国から
非難を浴びせられる始末です。
(福島の対岸に位置するアメリカが、
汚染水放出について批判してこないのは、
何かしらの理由があるのでしょう)

また、ガンダーセン氏は、
建屋の下の土壌と地下水の汚染に触れ、
一度高濃度に汚染された土壌は
今後300年は消えないとしています。

人工放射性物質の
プルトニウム239 (Pu-239)の半減期が
24,000年であることを踏まえれば、
この300年という表現は、
実質的に「永久に消えない」と
云われているに等しいと思います。

もはや手遅れかもしれませんが、
それならば、「エミシ」の末裔である
われわれ奥州/東北民が主体的に
福島の原子炉の諸問題の解決に向けて、
動いていくべきではないでしょうか。

2023年4月 編集:千葉光