て整理しました。
【過去完了形】①:用法編(たった・てあった)
編集者:千葉光
秋田県教育委員会編
次の資料では、過去完了形について、テンス(未来・現在・過去)、アスペクト(継続性
現在・完成相過去、継続性過去)の文法カテ
ゴリーを基に、例文を交えながら記述してい
ます。
※引用欄を二つに分けてあります。
秋田のことば(秋田県教育委員会, 2000年)
3 述語の表現
3-2 テンス・アスペクトの表現
(1) 状態述語のテンス
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(1) オメァ アシタノ ユーカ°ダ エンデ エルガ?
(おまえ、明日の夕方家にいるか?)〈未来〉
(2) [近所の家に訪ねていって] ジッチャ エダガ?
(おじいさん、いるか?)〈現在〉
(3) オメァ キンニャノ ユーカ°ダ エンデ エデアッタガ?
(おまえ、昨日の夕方家にいたか?)〈過去〉
※用例の採集地である南秋田地方では、人や
事物の〈存在場所〉を助詞「デ」で表す。
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状態動詞「エル(居る)」のテンス表現を見
てみよう。(2) の例のように〈現在〉の存在
を表す場合にタ形を用いるのは、東日本方言
に広く見られる現象である。
「エダ」は〈現在〉だけでなく〈過去〉にも
用いられるが、〈過去〉であることを明確に
するためには、(3) のように「エテアッタ(
有声化して「エデアッタ」)」(県北部・中
央部)、「エタッタ(有声化して「エダッタ
」)」(県南部)を用いることになる。
(中略)
「エル」以外の状態述語のテンス表現は次の
ようになる。
①名詞述語
〈現在〉
キョーンダンバ タエシタ エー テンキンダ。
(今日はとてもいい天気だ。)
〈過去〉
キンニャンダンバ タエシタ エー テンキンデアッタ。
(昨日はとてもいい天気だった。)
※形容動詞述語は、名詞述語の用法に準ずる。
(中略)
③可能動詞
〈現在〉
コノ ワラシ モー ヒトリンデ フグ キレダ。
(この子はもう一人で服を着ることができる。)
〈過去〉
コノ ワラシ キンニャンダンバ ヒトリンデ フグ キレデアッタ。
(この子は昨日は一人で服を着ることができた。)
④存在動詞「アル」
○本動詞
〈現在〉
チグエノ ウエンデ ショモジ アル。
(机の上に本がある。)
〈過去〉
チグエノ ウエンデ ショモジ{アッタ/アッテアッタ}。
(机の上に本があった。)
○補助動詞
〈現在〉
カンベサ チラシ ハッテ アル。
(壁にチラシが貼ってある。)
〈過去〉
カンベサ チラシ{ハッテアッタ/ハッテアッテアッタ}。
(壁にチラシが貼ってあった。)
以上は、いずれも南秋田地方の方言の例であ
る。名詞述語の〈過去〉に「デアッタ」を用
いるのは主に県北部・中央部であり、県南部
では「ダッタ」を用いる。
同様に〈過去〉を表す「シテアッタ」(上の
例の「キレデアッタ」「アッテアッタ」「ハ
ッテアッテアッタ」)は県北部および中央部
、「シタッタ」(上の例に対応する形として
は「キレダッタ」「アッタッタ」「ハッテア
ッタッタ」)は県南部で用いられる傾向が強
い。
(2) 動態述語のテンス・アスペクト
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(1)
アシタ オエノ アンバンダンバ オンデン コシェル。
(明日、うちのお母さんはおでんを作る。)
〈完成相未来〉
(2)
アシタノ エマコ°ロンダンバ オエノ アンバ オンデン コシェデル。
(明日の今頃は、うちのお母さんはおでんを作っている。)
〈継続相未来〉
(3)
エマ アンバ オンデン コシェデダ。
(今、お母さんがおでんを作っている。)
〈継続相現在〉
(4)
キンニャ アンバ オンデン{コシェダ/コシェデアッタ}。
(昨日、お母さんがおでんを作った。)
〈完成相過去〉
(5)
キンニャ オレ エサ キタ ジギ アンバ チョーンド オンデン
{コシェデアッタ/コシェデエデアッタ}。
(昨日、私が家に帰ったとき、お母さんが丁度おでんを
作っていた。)
〈継続相過去〉
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動態動詞の場合、まず、上の (1) (2) に見
られるように〈未来〉の表現に〈完成相〉で
「スル」、〈継続相〉で「シテル」が用いら
れるのは、全県的なものである。特徴的なの
は、〈現在〉と〈過去〉の表現であり、これ
には県内で著しい地域差がある。
上の例にあげた南秋田地方の方言の場合、(3)
のように〈継続相現在〉で「シテタ」(有声
化して「シテダ」)が用いられる点、および
〈過去〉の表現として「シテアッタ」(完成
相/継続相)、「シテエテアッタ」(有声化
して「シテエデアッタ」)(継続相)が用い
られるところに特色がある。
能代市などの県北部の方言では、〈継続相現
在〉で「シテラ」、〈継続相過去〉で「シテ
アッタ」が多く用いられ、大曲市などの県南
部の方言では、〈継続相現在〉で「シテダ/
シテラ」、〈完成相過去〉で「シタッタ」、
〈継続性過去〉で「シテダッタ/シテラッタ
」が多く用いられる。
以上をまとめると、次のようになる(なお、
県南部由利地方の体系は中央部と一致する)。
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継続相現在
県北部:シテラ
中央部:シテダ
県南部:シテダ/シテラ
完成相過去
県北部:シタ
中央部:シタ・シテアッタ
県南部:シタ・シタッタ
継続相過去
県北部:シテアッタ
中央部:シテアッタ・シテエデアッタ
県南部:シテダッタ/シテラッタ
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※〈継続相現在〉の「シテダ」「シテラ」は
、「発話時現在を含む以前」を表すので、〈
継続相過去〉でも用いることができる。しか
しながら、発話時現在を含まない純粋な〈継
続相過去〉は、「シテアッタ」「シテエデア
ッタ」等によらなければ表すことができない。
(中略)
ところで、シテアッタ形あるいはシタッタ形
が〈完成相過去〉を表す中央部・県南部の方
言では、動態動詞において、〈完成相過去〉
の形式にシタ形とシテアッタ/シタッタ形が
併存することになる。
この場合、ふたつの形式には、どのような機
能の違いがあるのだろうか。従来、シタは「
完了」、シタッタは「回想」「経験」「過去
完了」などと説明されることが多かった。
ここでは、シタ形とシテアッタ/シタッタ形
の機能の違いを次のように考える。
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★シタ形の表す過去
一般的・抽象的な過去、相対的な過去(完了
)、状態を表す。
★シテアッタ/シタッタ形の表す過去
具体的・個別的な過去を表す。従来、「回想
的過去」と説明されることが多かったが、こ
れは「シテアッタ/シタッタ」が「過去(発
話時以前)に当該の事態・出来事が存在した
」ことを、話者が自分自身の判断(体験)を
ふまえて述べるものであることによる。
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例えば、上の (4) の例では、「コシェダ」
という場合には、当該の事態を話し手とは無
関係に成立した事実として中立的に描写する
表現となるが、「コシェデアッタ(コシェダ
ッタ)」とすれば、当該の事態を話し手が自
ら認定した事実として述べるものとなる。
【補足①】
「3-2 テンス・アスペクトの表現」では、
状態述語のテンス表現について、例示して
います。
「デアッタ」を用いるのは主に県北部・中
央部であり、県南部では「ダッタ」を用い
るとしています。
【補足②】
「(2) 動態述語のテンス・アスペクト」で
は、継続性現在・完成相過去・継続相過去
ごとに県北部・中央部・県南部における用
法について分類しています。
編集者:千葉光